第十九章『C3の魔法使い』【3】 ページ30
「・・・入った。ここだな」
キッと盾一郎が車を停車させると、上着を羽織った三人は車から降車して。
「は―――――寒いね! さてと・・・」
白い息を吐き出しながら吊戯が呟くと。
弓景が襟元からジャラと黒い鍵束をぶら下げた紐を引っ張りだした後に、
「テメエらはそこから動くなよ」
そう言いながら首からその鍵束の紐を取り外すと、そこから鍵を1本手に取った処で、すっ、と車に突き付けてきて。
―――――鍵・・・?
一体何をするつもりなのかと、真昼が呆然と目を瞬かせると。
ズッと漆黒の渦のようなものが鍵の先端で具象化して、そこで弓景が手にしていた鍵を左に向かって半回転させると、パキンと車体全体が黒いモノに覆われてしまったのだ。
「な・・・!?」
真昼が愕然とした面持ちで窓に張り付くと、
「出ようとしても無駄だからな。車内で暴れるのはやめてくれよ」
車の持ち主である盾一郎が、言い聞かせるようにそう告げてきて。
「―――――・・・・・・もしかして、魔術による結界なの・・・・・・?」
C3は古い魔術に始まり、いろんな研究をやっているのだと、ロウレスは言っていた。
少し前に聞いたばかりの話を思い出した瑠璃が、眉を顰めながら窓の外から突き刺さった状態の『黒い鍵』に目を向けると。
両手の親指と人差し指を掲げる仕草をした吊戯が笑みを浮かべながら、
「はっは! 急な中二病展開に驚いたかい? お兄さん達はね魔法使いなんだ」
瑠璃の考えを肯定するような発言をしたのだが。
「『エクソシスト』のほうが近いんじゃないのか?」
と呼び名の訂正を口にした盾一郎が、その後に中二病言うなと眉を顰めていて。
「あ―――――そっちのほうがかっこよかったかな?」
吊戯が相槌を打ちながら自身の両掌を前に向かって広げる仕草をすると。キィと甲高い音が鳴り響き、吊戯の両手首にあった黒い紐のようなものが、閃光を瞬かせながら揺らめいた刹那―――――両腕を組む仕草をした吊戯のその身体に黒い紐がバチンと勢いよく巻き付いて。さらに上着の上からもまた、厳重に上半身を拘束するように、黒いベルトがバシッと装着されたのだ。
そうして吊戯の戦闘準備が整ったところで―――――
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2021年1月15日 20時