第十九章『C3の魔法使い』【2】 ページ19
「盾ちゃん」
そして彼に気づいた吊戯が名前を呼ぶと。
「窓から投げ飛ばして下でキャッチするなんてことにならなくてよかっただろうが」
なんとも物騒極まりない台詞を弓景が口にしていて。
「窓からって・・・・・・」
「怖ッ」
瑠璃と真昼が思わず、揃って顔を引きつらせると。
盾一郎もまた、お前な・・・と弓景の発言に、さらに呆れた様子で顔を顰めていて。
「二人とも、下に車止めてある。行きながら話そう。あと、これお土産な」
その後に、盾一郎はそう言いながら可愛らしい巾着包みを差し出してきて。
それは椿の騒動の翌日に、盾一郎の子供を交えて彼らが遊園地に行った際に購入してきたもののようで。
「あ、わざわざすみません・・・・・・」
「ど、どうも・・・?」
そこで一応、瑠璃と共に真昼は礼を言った上でそれを受け取ったものの。
「じゃなくて! あのっC3に行くって・・・」
きちんとした説明もなく、行き成りのこの展開はどういうことなのか、再度それを真昼が問おうとした処で。
「さっさと来い。しばらくテメェらは安全な場所に・・・C3の施設内にいてもらう」
射るような眼差しで此方を見ながら弓景がそう告げてきて。
「月満さん、つまりそれは今起こっている異常気象は椿に関係があるってことですか」
そんな弓景の視線に動じることなく、瑠璃が真っすぐに見据えながら聞き返すと。
弓景は僅かに目を瞠った後、チッと小さく舌打ちを漏らしたのだが。
「この異常な寒さは大量の灰塵の影響だ。灰塵は濃度が高まると雲のように大気中に浮かび太陽の光を遮る。もうすでにこの近辺は太陽の光が届きにくくなってんだ。これ以上真祖がやられるようなことがあれば冗談じゃなく夜の世界になっちまうぞ」
口調が荒く、常に怒っているように見受けられるが、一応の問いに対する答えを弓景は返してくれた。さらにあの吊戯の保護者のような立ち位置にもあるようだし。きっと根は面倒見の良い人なのだろう。
―――――それが弓景に対して瑠璃が抱いた心証だった。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2021年1月15日 20時