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第十七章『臆病者の唯一無二の想い』【2】 ページ8

シャムロックはアタッシュケースから、ベルキアはシルクハットから新たな武器を取り出す構えを取るのと同時に、攻勢へ転じようとしたものの―――――。

「―――――クロ!!」

 瑠璃が名前を呼ぶと、オトギリを床に寝かせたクロは気だるげな様子で、ズボンのポケットに両手を突っ込みながら立ちあがり、チラリとシャムロックとベルキアを見遣ると、自身のジャケットの裾を巨大な手のような形に変えた上でズンと抑え込んで、武器を手放さざるを得ない状態に持ち込んでしまったのだ。

「はあ・・・めんどくせ・・・」

 そして溜息を漏らしながらお決まりの台詞を呟いたクロが、両手を広げながらさらにズズズズズズとジャケットの裾を大きく広げるのと同時に、ズアアッと漆黒の杭を周囲に具現化させると。

 クロの背後に跳躍した真昼が手にしていた槍を一気に振り下ろして、カッと漆黒の杭をシャムロックとベルキアに目掛けて撃ち放ったのだ。

 しかし、その攻撃もまた命まで奪うものではなく、意識だけを昏倒させるものだった。

 そうして御園達の下に駆け付けた真昼達が憂鬱組の下位三名に対して劇的な勝利を収めた時。





「さっきの黒い獅子(ライオン)・・・下の3人じゃきっと荷が重いな。さて・・・と。助けに行くか」

 ぼたぼた・・・と地面に血を滴らせながら、だらりと腕を下げた体制となってしまったリヒトの胸倉を右腕で掴みながら、左手で後ろ髪を掻き上げる仕草をしつつヒガンは呟いた。

 主従の絆を取り戻したリヒトとロウレスの見事な連携プレーにより、戦闘開始直後はヒガンに対して二人が優勢であるかのように思われたのだが―――――。

 しかし、両手にはめていた黒い手袋をヒガンが口で銜えて外したその後に、素手でリヒトの頬を抉り、その血を舌で舐めると。吸血鬼としての本能を解放し、全盛期の頃の姿を取り戻したことにより。形勢は一気に逆転して二人は劣勢に追い込まれてしまったのだ。

 それからリヒトがヒガンに捕まってしまった時、ロウレスもまた身体に力が入らず、地面に俯せの状態となってしまっていた。

 そして苦痛に顔を歪めながら、げほっとロウレスは咳き込むと、先程、ヒガンとの戦闘の最中、窓の向こう側に目にした巨大な漆黒の獣の事を思い出していた。

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マユ(プロフ) - 感想&応援メッセ下さって有難う御座います!こうしてコメントを頂けるのは本当に嬉しく励みになります!これからも頑張って書き進めていきます! (2020年11月28日 0時) (レス) id: 58c018d700 (このIDを非表示/違反報告)
らぶたん(プロフ) - 今回も面白かったです。これからも応援しています! (2020年11月27日 23時) (レス) id: 74fbd3ebea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2020年10月25日 13時

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