第十八章『許すものと赦されざる存在』【3】 ページ38
「クロっ!?」
瑠璃が声を上げると同時に、ザクと椿の刀は振り下ろされた。しかし、間一髪の処でクロが身を退いたことにより、フードのファーの部分を僅かに掠っただけで済んだのだが。
「もう君と話したいことはない」
冷然とした笑みを浮かべながら、クロにそう告げた椿の漆黒に染まった右掌から、具現化した3つの椿の花がゆっくりと落ちていく。
それを目にした瑠璃が『鍵』の力を発動させてロッドに変えると、クロの傍に走り寄ろうとしたのだが。
「瑠璃!! お前はそこに居ろ・・・・・・っ!!」
瑠璃に対してクロが制止の声を上げると。
「そうだよ、瑠璃。君のことを傷つけるつもりは僕にはないんだからさ」
椿もまた柔らかな口調で瑠璃にそう言った後に。
「あははっ、単体としての性能は僕のほうが上か」
「・・・ッ」
狂乱状態で容赦なくガガガッガと刀で斬りつけてきた椿に対して、クロは防戦一方に徹しながら。
「オレは話があるっつってんだよ!」
椿に向かって叫び。
「お前はオレがぶん殴ってでも止める」
右手を伸ばして椿の左腕をしっかりと掴んだ処で、真っ直ぐに瞳を見据えながらそう宣言したのだ。
「あはっ、その兄貴面はとっても面白くないなあ!」
すると、椿からは失笑が返ってきたのだが。
「オレのしたこととお前のしたことについて話をする必要があんだよ。もう・・・後悔したくねーんだ」
クロは椿と向き合うことを諦めず、懸命に自身の想いを言葉にして紡ぎ出した。
「・・・・・・椿」
そうしてそれまで二人の様子を静観している事しか出来なかった瑠璃が、そんなクロの想いを後押しするように椿の名前を呼ぶと。
「・・・・・・どうして・・・・・・」
椿の左手に握りしめられていた刀が、ふいにその手の中から滑り落ちていって。
それに気づいたクロが掴んでいた椿の左腕から右手を離すと。
「・・・先生は本当に僕のことを何も話していなかったのかい?」
ポツリと椿はクロにそう言った後に。
「・・・どうして先生は僕が存在しているってことを君に伝えてくれなかったのだろう・・・」
悲痛に満ちた面持ちで椿が口にしたその言葉にどう答えるべきなのか。
その答えをクロは見つけることが出来ず、困惑の面持ちで椿の顔を見つめ返していたのだが。
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マユ(プロフ) - 感想&応援メッセ下さって有難う御座います!こうしてコメントを頂けるのは本当に嬉しく励みになります!これからも頑張って書き進めていきます! (2020年11月28日 0時) (レス) id: 58c018d700 (このIDを非表示/違反報告)
らぶたん(プロフ) - 今回も面白かったです。これからも応援しています! (2020年11月27日 23時) (レス) id: 74fbd3ebea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2020年10月25日 13時