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第十八章『許すものと赦されざる存在』【2】 ページ36

「だからオレはここをどけねーんだ・・・。お前とはオレが向き合わなきゃなんねー」

 ひたと見据えてきたクロに対し、椿は不愉快そうに眉を顰めたのだが。

「・・・交えるべきは武器じゃない。言葉だ」

 クロは構うことなく、椿に向かって右手を伸ばしていく。

 その時、クロが思い出していたのは、過去の罪と向き合うことが出来ず、自身の中に在る真っ暗な部屋の中に閉じこもってしまった時の事。

 そこで武器を使うことを選択せず、体当たりで言葉を介して、向き合ってくれた真昼と瑠璃の事だった。

 そしてクロが椿の手にしていた刃を躊躇うことなく、右手で握りしめた時。

「・・・・・・クロ、・・・・・・椿・・・・・・」

 クロが口にした言葉をきっかけとして、瑠璃が完全に意識を覚醒させたのだ。

「ああ、兄さんの所為で瑠璃が目を覚ましちゃったじゃないか」

 クロの行動に呆然とした面持ちになっていた椿は目覚めた瑠璃の姿に気づき眉を顰める。

 と―――――

「主張に一貫性が無いのは議論が成立しないから好きじゃないな。君はろくに対話もせずに先生を殺したんだろう? それなら僕のことも同様に殺すべきじゃないか!」

 目を眇めながらクロに対して煽るかのようにそう言ったのだが。

「・・・それを後悔してっからこうして―――――・・・」

 しかし、クロは椿の刀を掌で握りしめ続けるのを止めることなく。

 クロは椿と話し続けようとしたのだが―――――。

「後悔!?」

 椿はそんなクロの行動を蔑む様に、刀を振り下ろして。ざく、とクロの掌を深く斬りつけたのだ。

「クロ・・・・・・っ!?」

 体を起こした瑠璃が愕然とした面持ちで口を両手で覆う。

 そしてクロが苦痛に顔を歪めると、その様を目にした椿は狂気に満ちた笑い声を上げながら、「かあっるううううううい!! あははっ、なんて軽い後悔だろう!! 君のまことのことばはここにはないな」

 真紅の瞳を弓形(ゆみなり)に細めると「ねえ、僕のことどれくらい考えられる?」と薄ら笑いを浮かべた椿は刀を手放すと、両掌を自身に向けながら告げてくる。

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マユ(プロフ) - 感想&応援メッセ下さって有難う御座います!こうしてコメントを頂けるのは本当に嬉しく励みになります!これからも頑張って書き進めていきます! (2020年11月28日 0時) (レス) id: 58c018d700 (このIDを非表示/違反報告)
らぶたん(プロフ) - 今回も面白かったです。これからも応援しています! (2020年11月27日 23時) (レス) id: 74fbd3ebea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2020年10月25日 13時

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