第十八章『許すものと赦されざる存在』【2】 ページ32
ロウレスが伸ばした右手がドッグタグを掴む手前で、椿が振り下ろした漆黒の刀によって、バキンと真っ二つに両断されてしまい。さらにロウレスの左肩までもが斬り捨てられてしまったのだ。
「てめぇ!!」
ロウレスの後を追うようにやって来たリヒトが椿に対して怒りの声を上げる。
「リヒ」
耳朶に届いた主人の声に咄嗟に振り返ったロウレスが名前を口にしようとした。しかしその刹那―――――ロウレスの口からはドバと大量の灰塵が放出され始めてしまい。
粉塵が吹き荒れ始めた中で反射的にリヒトが右腕で目を覆って立ち往生してしまったその時。シャンと空気を震わせながら舞い散らせた椿の花を媒介にして、新たに漆黒の刀を二本作り出した椿が狂気の笑みを浮かべながら、ロウレスに止めを刺すべく迫ってきたのだ。
そこで瑠璃の身体を素早く床に横たわらせたクロが、椿からロウレスの身柄を護るべく、瞬時に正面に立ち塞がるのと同時に、椿が作り出した漆黒の刀を一本右手に掴むと。椿もまた左手で漆黒の刀を握りしめながら振り下ろしてきて。ガキンと両者の刃が激しくぶつかり合う音が響き渡った。
「・・・どいてよ怠惰の兄さん。兄さんが殺せないよ」
刃を退くことをしないまま、椿が告げてくる。
「僕、強欲の兄さんに言っちゃったんだよね。灰塵を吐かせるだけじゃすまないな・・・って。首を落とさなきゃ。
「・・・ほんとめんどくせぇ隠し子がいたもんだ・・・」
しかし、クロも退くつもりはなく。ひたと椿を見据えたまま、呟いたその言葉に。
「あはっ認めてくれるの? 僕が兄さん達の弟だってこと」
「・・・認めざるを得ねぇよ。こんな
嘲笑するかのような笑みを浮かべながら訊き返してきた椿に、クロはギ・・・と刃を押し返さんとしながら応じる。
と―――――
「・・・そう。一人しかいない。君が殺しちゃった僕の先生しか」
クロが紡ぎ出したその言葉に椿は、に・・・と口端を吊り上げて。
「捜したよ黒い獅子、先生は君が・・・殺しちゃったんでしょう? 僕は・・・君に訊きたいことがあったんだ」
にっこりと笑みを浮かべながらクロの顔を見つめ返すと、そこで微かに動揺した面持ちになったクロの手からその僅かな隙を突いて刀を弾き飛ばしてしまったのだ。
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マユ(プロフ) - 感想&応援メッセ下さって有難う御座います!こうしてコメントを頂けるのは本当に嬉しく励みになります!これからも頑張って書き進めていきます! (2020年11月28日 0時) (レス) id: 58c018d700 (このIDを非表示/違反報告)
らぶたん(プロフ) - 今回も面白かったです。これからも応援しています! (2020年11月27日 23時) (レス) id: 74fbd3ebea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2020年10月25日 13時