第十五章『向き合うことの覚悟』【3】 ページ9
アロハシャツを羽織って、その下には原宿と書かれたTシャツにハーフパンツ―――――如何にも日本を観光する為にやって来たばかりという風体の外国人を装ったクランツが、まず宿泊希望客としてフロントに向かい。
「サイジョウカイあいてマスカ? ワタシ最上階からTOKYOの夜景見たいデスネ〜。TOKYOサイコー! シブヤ! ハラジュク!!」
―――――ホテル内の客室状況に関しての探りを入れる。
「申し訳ございません。最上階は満室となっておりまして・・・」
「オ〜ザンネン! 何階ならあいてマスカ? できるだけ高〜いトコロがいいデス!」
そしてフロントの受付女性とやり取りするクランツの様子を少し離れた場所から―――――金髪のカツラを被ってサングラスをかけただけでなく、黒い帽子とスーツを着用―――――ベタベタなスパイ映画に出てくる人物のような格好に変装をした御園が椅子に座って本を読むフリをしながら見ていて。
鉄も御園と同様の格好をした上で、黒髪の長髪を一纏めにしたふうのカツラを被って、壁に寄りかかるようにしながら立って待機していた。
《上のほうの階は単純に満室という場合もあるだろう。その辺も確認してくれ》
御園が袖口に仕込んだ小型通信機からクランツに指示を出す。
それに対しクランツもまた、アロハシャツの襟の内側に付けた小型通信機を介してキメ顔で「任せてくれ」と小声で応じると、
《・・・貴様けっこう楽しんでるな》
呆れた様子の御園の声が聞こえてきたものの、気にすることなく。
「一泊でしたら41階のお部屋がご用意できます」
フロントの受付女性からの案内にクランツは、サンクス♥と笑みを浮かべると。
「41もいいデスネ〜。デモネ〜セッカクだから最上階がイイんダケドネ! イツなら泊れルデスカ〜? 次、ジャパン来たトキのタメヨヤクしちゃいたいデス!」
ワタシジャパンダイスキ! とダメ押しのように尋ねかける。
「・・・申し訳ございませんお客様。43階以上はフロア単位で長期契約のお客様が・・・」
すると予想だにしなかった返答がフロントの受付女性から返ってきたのだ。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2020年7月31日 21時