第十六章『誤算』【1】 ページ29
「!?」
気配を感知できなかったギルデンスターンが愕然となりながら、ばっと椿を振り落とそうとするも、しかしその時には既に椿は着ぐるみから離れていて。
「う―――――ん・・・? 中に二人の人が入っているようには感じられなかったけど・・・。着ぐるみが厚っこくてよくわからないな」
トッと地面に降り立った椿は着ぐるみに触れた時の感覚を確認するように、左手の指先を動かしながら呟く。
と―――――
ふいに、薄暗くなった空からぽつと雨粒が落ちてきて、クジラの着ぐるみに染み込んでいき。
「森の中でクジラとかくれんぼ。意味がわからなくて結構好きだな。ああ、でもクジラか・・・。森の中に昔から住んでるふうの生き物だったらもっとよかったんだけど」
鬱々とした雰囲気を放ち始めた椿の気配がさらに周囲に満ちていくと、雨粒の量もまた徐々に増え始めて。
「・・・あはっ。あはははは、あははっ、あはっ、あははは、あははははは。オカリナとか吹いたらどうかなあああ?! あはっ、あははははははは。あ―――――おもしろくな―――――〜い」
椿の口からは狂乱の笑い声が溢れ出す。
「続けよう。だってかくれんぼ。全員みつけるまで終わらない。みつからなかった最後の一人がかわいそうじゃないか」
そうして狂気に満ちた面差しとなった椿はクジラの着ぐるみ達に向かって、
「さあ。あ―――――そび―――――ましょ―――――?」
両手を差し出すとそう言ったのだ。
一方、憂鬱組の拠点があるホテルのエレベーター内で、椿の
―――――・・・最下層地下5階・・・!
―――――ギル達が椿を足止めするのにも時間は限られる・・・。
―――――早く強欲組を救出しないと・・・。
桜哉と睨み合いながらも、エレベーターの行く先パネルに表示された階を確認した処で、強欲組の救出作戦を立てる前に全員で集まった時のやり取りを思い出していた。
「
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2020年7月31日 21時