第十一章『Alice in the Garden《スノーリリイ》』【8】 ページ27
―――――カツン・・・カツン、カツン
静まり返った建物の中に、御園と瑠璃の靴音が鳴り響く。
東館の中は、長く人が立ち入っていなかった為に、天井や壁のあちこちにクモの巣が張り巡らされており、歩く度に床に積もったホコリが舞い上がって。
「御園君、私は服の袖で口を覆えば大丈夫だからこれ使って」
病み上がりの御園の事を気遣い、スカートのポケットから取り出したハンカチを差し出したのだが。
右手に懐中電灯を持って先を歩いていた御園は、ごほっと一度、咳をしたものの。
「僕のことは気にせずに、瑠璃、貴様が自分で使っておけ」
そう言ってハンカチを受け取ることはせずにそのまま歩いて行く。
そして―――――
「ここからは階段を上がっていくから足元には気をつけるんだぞ」
そう御園は瑠璃に告げると、ゆっくりと階段を照らしながら登る中で、忘れていた過去の記憶を少しずつ取り戻し始めていた。
―――――・・・思い出す
―――――するするとほどけるみたいに
―――――そうだ・・・昔は僕の部屋もこの東館にあって
―――――ここで僕は7年前のあの日
―――――御国が母さんを殺したのを見たんだ
はぁ、は―――――・・・、は―――――、は―――――・・・と御園が冷や汗を流しながら苦しそうに息を吐き出したのを目にした瑠璃はそっと御園の左手を両手で握りしめる。
「―――――御園君、大丈夫?」
「・・・・・・・っ、すまない、瑠璃」
謝罪を口にした御園に、瑠璃は静かに頭を振る。
御園の手を握った刹那、瑠璃の意識の内にも―――――武器を手にした嫉妬の吸血鬼を連れた、少年の御国が事切れた母親の前に立っている姿が見えていた。
―――――・・・・・・あれが御門さんの中から『御国』さんがいなくなってしまった理由なのだとしたら。
―――――・・・・・・御国さんはどうしてお母さんのことを。
御園と手を繋いだまま、瑠璃は御国の部屋の扉の前まで歩いて行く。
右手で御園が部屋の扉のドアノブを回すと、ギィ・・・という音を鳴らし開かれた扉の向こう側の床には、バイオリンと何冊かの本が散らばっている様子が見えた。
そして壁伝いに照明のスイッチを探り当てた御園がそれをパチと押すと、部屋の中は明るくなったのだ。
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マユ(プロフ) - 楓さん» コメント、有難う御座います!又、ロウレスの登場、楽しみに待って下さっていたとの事で。ここまでお付き合い下さっている事に本当に心よりお礼を申し上げます!加えて、凄く面白いと言って頂けて本当に励みになりました。不定期更新ですが頑張って今年も執筆しますね! (2020年2月4日 21時) (レス) id: aafe96c388 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - ロウレスの登場、ずっと楽しみにしていました!この作品、凄く面白いので、これからも更新頑張って下さい!! (2020年2月4日 20時) (レス) id: 4f59bad892 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2019年11月9日 23時