第二章『蝶と椿』【2】 ページ41
「お嬢さん、てっきりうちのアホ毛と同じ高校生くらいかと思ってたんすけど。もう働いてるってことは、学生さんじゃなかったんすね」
「あ、はい。見えないってよく言われるんですけど、もう成人してます。今年で21になりました」
運転しながらもこちらの話には耳を傾けていた洞堂が、漏らした言葉に、「アホ毛」って御園君のことだろうかと、心中で首を傾げつつ瑠璃は頷き。
「―――――あの、そういえば御園君って今日学校は?」
今更ながらの質問になってしまうかもしれないと思いながらも、口にしてみると。
「御園は体が弱いから」
「たまにお休みしちゃうの」
ユリーとマリーがそれに答えてくれた。
こうして、会話を繰り広げているうちに、目的地である駅前通り付近に辿り着いたようだ。
「お嬢さん、着きましたよ」
車を停車させると、こちらに振り返り、声を掛けてくれた洞堂は、シートベルトを外すと、運転席のドアを開いて車外に出て行く。車はドアが開かれた際に、車内に日光が入らないよう、吸血鬼たちが同乗していることもきちんと配慮して、陰になる位置に停められていた。
「―――――ありがとうございます、洞堂さん」
そうして、左側の後部座席のドアを開いてくれた洞堂に、瑠璃は恐縮しながら車外に降り立つ。
「では、瑠璃さんお気を付けて」
「「またね、瑠璃」」
「えぇ。それじゃあ、また」
車内に残った真祖と双子の下位に瑠璃は手を振り、別れると、ポケットから取り出したスマホから、真昼にメッセージを手早く送り、駅前通りを抜けようとしたのだが。
「――――あれって、真昼君?」
ふと、前方に見覚えのある後姿を瑠璃は発見し、目を瞬かせた。
リュックを左肩に引っかけて駅前通りを歩いていく栗色の髪をした制服姿の少年の右肩には小さな黒猫が乗っている。
けれど、どうやら一緒に居るのは黒猫だけではないようだ。
真昼とすれ違った二人の女性たちが、彼の方を見ながらこそこそと小声で、
「ねぇあの子・・・」
「ぬいぐるみと喋ってる」
くすくすと笑いながらそんな会話をしていたのだ。
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マユ(プロフ) - ルルさん» とても嬉しいコメント、有難う御座います! 現在、最新シリーズでは原作の二巻をベースに執筆中な為。傲慢組や強欲組の登場はまだ先になってしまうと思うのですが・・・。私も彼らとの話は書きたいと思っているので・・・。気長にお付き合い頂けたら幸いです! (2018年4月27日 22時) (レス) id: 6997652f0b (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - すごく面白かったです!傲慢組や強欲組との絡みもどうなるか気になりました! (2018年4月27日 20時) (レス) id: f9398f263f (このIDを非表示/違反報告)
マユ(プロフ) - AAAさん» こちらこそ、ご丁寧に有難う御座います。 (2018年2月20日 23時) (レス) id: 6997652f0b (このIDを非表示/違反報告)
AAA - 返信ありがとうございます! (2018年2月20日 22時) (レス) id: ad871f5681 (このIDを非表示/違反報告)
マユ(プロフ) - AAAさん» AAAさん、コメント有難う御座います!面白いと仰って頂けてすごく嬉しいです! シリーズはパート4まで掲載中です♪続編を見るから、次のシリーズに飛べますのでどうぞよろしくお願い致します! (2018年1月15日 21時) (レス) id: 6997652f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2017年5月21日 21時