Precious Love

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気分を入れ替えるために来たトイレで
はぁ、っとため息。




せっかく楽しみにしてきた同窓会もすっかり気分が沈んでしまって楽しめない。





それに、どこもかしこも一回は彼の話が出てきて



どう反応すればいいのかわからなくなる。



だってその度に、

息苦しくなるから。



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「もう超楽しいんだけど」

「ほんとねー！」









そんな声と共に近づいてくる足音に何故か個室へと逃げ込んだ。









「…てかさ、お目当ての人が来てないのはショック」

「あー…勝利くんでしょ？」

「そうー。あたし勝利くんに会うために来たようなもんだし」









ここでも彼の話が出てきて

思わず息を吐き出しそうになる。









「あ、ファンなんだよね確か」

「ファンってか、ガチめに好きな方」

「えっじゃあ中学の時からずっと？」

「まぁねー」

「…じゃあだいぶ悲しんでるやつ？」

「大分どころじゃないよー！あたしの計画的にはさ、ここで会って話しかけて仲良くなって連絡先交換して…って感じだったわけ」









やっぱり、同じ気持ちの人だって沢山いるんだって


彼に会いたいという願いなんて
この世に数多くあるんだって









「そんな上手くいく？」

「上手くいくようにしなきゃなのー！だって、こんなチャンス滅多にないし 」

「…てか、そうまでしたいもんなの？」

「当たり前でしょ？」

「仮にそういったとしてもさ、恋人にはなれないでしょ？」

「だからって諦められるような恋じゃないの」









“恋人にはなれなくてもいいから、気軽に会ったり話したりしたいの”



“彼の近くに居てもいい存在になれたら、それだけでいいの”





なんでだろ、


こんなにも胸に突き刺さる。





その言葉が、あまりにも透明すぎて

純粋すぎて




醜い私の心に

溶け込むことなく





鋭く、突き刺さったまま。

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