好きになる以外の選択肢。 (ページ7)

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課題にゼミに研究発表に、と学業も忙しくなりつつある中、映画の撮影が始まった。長ゼリフはないものの、演技経験もなにもない私が出ていていいのだろうか。正直やっぱり不安だ。

いつもの1.5倍くらいしっかり施された化粧、ふわりと巻かれた巻き髪。撮影期間中は鏡を見るたびに別人なんじゃないかと思ったりする。

スタッフさんの名前と顔がまだ一致しないけど、セット以外にも音響だとか細かな部分を間近で見させてもらえるのはかなり新鮮で。

ただ、撮影した音声に全く知らない女性のすすり泣きが入っていたりだとか、とあるシーンにて藤谷さんのことを幽霊が引っ張っただとか、怪しい噂を耳にすることも多い。

藤谷さんに接触する機会も減ってしまったこともあってか、この先何が起こるのかとか、具体的な部分を思い出せない。今日は何が起こるんだろう。バタつくスタッフさんを尻目に自分の予定を確認。

なんだかスタジオ内がざわついてるなーと思い様子を見に行くと、先生と深町くん、難波くんに瑠衣子先輩が来ていた。どうかバレませんようにと手を合わせていると、藤谷さんに手招かれてしまった。終わった。

「柊さん！瑠衣子くんから聞いたよ、映画出演するんだってね！」
「ええ、まぁ…。先生、近い」

うんうん、と嬉しそうに手を掴まれる。久しぶりの距離感バグと顔面…。うぅ、好き。

「え、A先輩映画出るんですか!?」
「うん、ちょっとだけね」

先生御一行は若いスタッフの方が連れて行ってくれたので一安心。午後まで暇だし適当に時間を潰そうと中庭へ向かおうと思った、のだけれど。

「あ、そうだ！柊さん、このあと飲み行かない？」
「えーっと、このあとはゼミに戻らなきゃいけなくて」
「そっかぁ、じゃあ連絡先だけでも交換しない？」
「そ、れは」

藤谷さんとマネージャーの宮原さんだけで事足りているからわざわざ交換しないでも、と思ったけれど中々引いてくれそうにない。この前も断ったつもりでいたんだけどな。

「僕の大切な教え子なので、そういう事は控えていただけませんか」

お断りを入れてくれた高槻先生。状況も相まってか普段より5倍増しでかっこいい。先生の効果は覿面で、すぐにどこかに行ってしまった。

「ごめん、柊さん」
「先生が謝ることないです」

撮影頑張ってねと微笑まれたけど、いつもの大好きな先生の笑顔じゃなくて、なんていうか、ちょっと距離がある感じ。私も先生とちゃんと話をしないといけないなと痛感した。