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水槽を彩る鮮やかな魚やイソギンチャク。図鑑でたまに見かけるようなマイナーな魚から、映画の題材になったようなメジャーな魚までよりどりみどり。タコとかカニとか見るとお腹すいてきちゃう。
「魚って自分のことを認識できて、色んな性格の魚がいて、最近の実験でわかったみたいなんですけど、魚もドラッグを好むらしいです。人みたいですよね」
「そうだね。魚も僕達も、ここでしか生きられない。ちょっと似てるかも」
ふふ、と少し哀しそうに微笑む彰良さんは、なんだかこの世のものとは思えなくて。なにか言葉をかけるべきだと思って言葉を探るけど、私はこの人の過去も悩みも知らないし、そんな人に無責任に言葉を投げかけられるほど私もバカじゃない。
もっと昔から知り合えていたらな、とか、私のコレが未来じゃなくて過去が見えればいいのに、とか。どうしようもない何十回目かの後悔。
他愛もない会話をしながら、ここの目玉であるクラゲの水槽へと向かう。ミズクラゲをライトアップして展示するというもの。何度かSNSで見かけていたのでビジュアルの想像はできていたけど、実物は想像以上に綺麗だった。
「綺麗…、クラゲって神秘的な動きしますよね。育てるのすごい大変って聞きますけど」
「水流で傷ついちゃったり、壁に当たって削れちゃったりするっていうよね。僕もクラゲってただふわふわ〜ってたゆたってるだけなのかと思ってたよ」
「確かに。実態知らないとなんだか癒し系の生き物ですもんね。…あ、そうだ。写真撮りましょ!」
いいよと快諾してくれた彰良さん。私の肩を寄せて、まるで普通のカップルのようなツーショットが1枚出来上がった。ふわっと香る香水の匂いにどきりと胸が弾む。
今日の件は嫌味な社長秘書の黒木さんにバレませんようにと強く願うばかり。たぶんいずれドヤされるんだろうけど。あとでパソコンにバックアップとっておこう。
お土産屋さんでゼミの先輩たちにラングドシャと、深町くんにチンアナゴの抱き枕を購入。私個人用にメンダコのぬいぐるみ。彰良さんは彰良さんで、他学部の先生たちにとお菓子やらなにやらを買い込んでいる。
思いの外荷物がかさばっちゃったのでショッピングモールのインフォメーションにて預かってもらうことに。お昼は彰良さんが美味しいスイーツバイキングをご馳走してくれた。ケーキに囲まれて幸せそうな彰良さんも愛おしい。今日が永遠に続けばいいのに。
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ちくわ。(プロフ) - かふぇもかさん» コメントありがとうございます!不定期更新なのでお話をコンスタントにお届けすることが難しいのですが、今後ともこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年8月24日 20時) (レス) id: eb81f6bdc7 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇもか(プロフ) - こんにちは^ - ^いつも楽しく読ませていただいてます!(?)このお話毎日読み返してニヤニヤしてます(( (2021年8月22日 18時) (レス) id: 586d3de0ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちくわ。 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pipipi__dream
作成日時:2021年8月9日 0時