好きになる以外の選択肢。

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出されたお茶も美味しかった。自然に囲まれて飲食すると、なんだか少し美味しさが増すのはなんでだろう。都会みたいに薄汚れた空気じゃないから？学術的に誰か解明して欲しい。


「こんな綺麗な奥さんと、正也くんと離れるなんて、旦那さん気が気じゃなくてしょっちゅう帰ってくるんじゃないですか？」
「いえ、仕事が忙しいとかで、今年に入ってまだ一度も帰ってきていません」
「え、一回も!?…急に大声出してごめんなさい」


いきなり大声を出してしまうくらいにはびっくりした。瑠衣子先輩の言うように、少なくとも毎週くらいは戻ってくると思ってた。


実家に愛する奥さんとあんなに可愛らしい息子さん置いておいて顔を見せてくれないの？しかも今年に入ってから一回も顔見れてないなんて、ショックすぎる。


ただでさえ先生に会えなくて干からびてたのに、何ヶ月も会えなかったらもう干からびるどころか土に還元されてしまうと思う。いやほんとに冗談じゃなくて。


美和子さんは離れていても旦那さんが離れていても自分たちのことを一番大事に思ってくれていると分かっているから、平気だと言っていた。もしかして、私に堪え性がないだけ？


「鬼の動画、正臣さんが制作したんですね。クオリティ高くてびっくり」
「でも、嘘の鬼を使って町おこしなんて許せない」
「確かにそうですけど、村を愛する形も、人を愛する形も、人それぞれなんじゃないかなって。もちろん嘘は良くないですけど」
「Aちゃん、もしかして美和子さんに触発された？」


そんなことないですよ、と慌てて訂正すればほんとにわかりやすいねとよしよしされた。深町くんの能力なんてないことくらいわかっているけれど、瑠衣子先輩の前では全部お見通しで困る。

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