・ ページ37
山村さんが案内してくれた祠、なんだか祠というより、鍾乳洞とか洞窟だとか、そういったものに近い気がする。あと意外と足場が険しい。
近くの岩には、岩をびっしりと覆うほどの苔が生していて。長い年月そこにあったものなんだろうと感じさせるには十分だった。それでもどこか不可侵領域のような、神聖さを感じてしまうのは何故だろうか。
「私ら、子供の頃はよく中で肝試ししたものです」
子供のころからという口ぶりからも分かるように、山村さんはこの村で育っていて、自分のような若い人たちは去ってしまったと自虐的に笑っていた。
こんな村に住みたいなんて思わない、と吐き捨てていたけれど、この発言に深町くんが顔を顰めていたので嘘なのだろう。
少し苔を採取させていただこうと、荷物を漁っていたその時。大きな悲鳴と、飛び出してきた…あれ、深町くんの友人(仮)!どうやら難波くんというらしい。
「どうしたの、大丈夫?怪我してない?」
「がが、骸骨!お、鬼!」
手を伸ばせば、ものすごく語彙力の低い回答が返ってきた。君、仮にも文学部なのに語彙力どこかにやったんか。にしても、骸骨って…。
気になって奥まで進めば、御神酒と思わしきものが赤い布と共に崩れ落ちていた。山村さんが言うには、今朝の地震がきっかけだとか。
視線を横にずらせば、鬼の骸骨、と呼ばれたものが転がっていた。よくよく見れば、額のど真ん中に穴が空いていて。細部までよく見たせいか、思わずひゅっと喉がなる。解剖学で見たような、綺麗なヒトの頭蓋骨とは異なるけれど、特徴がぴたりと一致して。
「先生、それダメなやつです」
「うん、そうだね。…残念だけどこれ、人の骨だよ」
骨の造形だとかは分かるのだけれど、考古学を学んでいるわけでもないので、その人物がいつ亡くなったのかなんてものはわからない。
それにしても、人骨を祠に入れて祀るなんて。何事なんだろう。人柱とか?
355人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちくわ。(プロフ) - かふぇもかさん» コメントありがとうございます!不定期更新なのでお話をコンスタントにお届けすることが難しいのですが、今後ともこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年8月24日 20時) (レス) id: eb81f6bdc7 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇもか(プロフ) - こんにちは^ - ^いつも楽しく読ませていただいてます!(?)このお話毎日読み返してニヤニヤしてます(( (2021年8月22日 18時) (レス) id: 586d3de0ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちくわ。 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pipipi__dream
作成日時:2021年8月9日 0時