好きになる以外の選択肢。

#3 鬼伝説の怪 ページ34

新学期が始まって、1年生も新生活に慣れだしたみたい。サークルの雰囲気を肌感覚で理解したのか、近くのアルバイトは新入生で溢れかえっている。あと2ヶ月くらいしたらカップルが量産され始める頃だ。時の流れって早い。


にしても忙しい。連休前なのに何故こんなにも課題が立て込んでいるのか。ここ最近般教の授業以外で先生を見ていない気がする。私が見つけられていないだけかもしれないけど。


「あー…高槻先生…」


最後に話したのいつだっけ、5日くらい前？研究室にも顔を出していないし、健ちゃんさんのお母さんのご飯もあれ以来食べられていない。自分のゼミとアルバイトで今はてんやわんやだ。


なんとなく開いたメッセージアプリ。未だに先生とのトークは水族館に行こうねと言うメッセージとお魚スタンプで終わっているし、お気に入りにも追加できていない。…つまり、あれ以来進展も音沙汰もないわけで。


はぁ、と思わず小さくため息が出る。授業以外でたまに深町くんとお昼を食べるようにはなったから先生の近況についてはなんとなく把握しているつもりだけれど、直接話したりできないのはつらい。


連休中にお泊まりしたり、デートしたり、ちょっとした小旅行にいったり、連休前だからか、休み時間もそんな話題でもちきりだ。若い子達の計画力と行動力、半端ない。


圧倒的キラキラ陽キャ学生たちの話題にどこか置いてけぼりにされた感じが否めないけれど、今日も今日とてゼミに引きこもる毎日。やってらんないね！


気分転換にとカフェスペースでカフェオレをテイクアウトしながらスマートフォンで課題の提出日を確認していると、唐突に高槻先生から連休空いてる？とメッセージ。


ほんとにいきなりだったからびっくり。連休空いてる？ってなに、なんかちょっと彼氏みたい！ここだけスクショしてロック画面にしていいかな？


数週間ぶりの高槻先生からの連絡に舞い上がって、空いてます！なんて即座に返信。恋は盲目とも言うらしいけれど、それは事実だと思う。


数分後、鬼の呪いがどうとかいう、この前誰かが話していた呪いの動画が送られてきて。この動画の撮影地に現地調査に行くらしい。連絡が来たきっかけが怪異というのが少しだけ寂しかったけれど、先生に会えるならもうそれだけでいいや。

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