【実況者】ゲームじゃない世界【平和組】 (ページ36)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:20,351 hit

29話[プレイヤー……レトルト] ページ36

「あー……」

リビングでスマホゲームをしているとAが呻き声をあげていた。

どうしたんだろう？

「どうしたん？」

「ハンバーグの材料がないのだよ、レトルト君」

「なんやと!?……ってなんやその口調」

「ふふっ、言いたくなったんだ。あのね、ハンバーグの材料がないの」

「う、うん。さっき聞いた。今日はハンバーグなの？」

「うん。つわさんのために！ということで買ってきます♪」

爽やかな笑みを浮かべて自分の部屋に行くA。

つわはす君のために……か。

きっとつわはす君が落ち込んでたりしたのかな？

お人好しなAのことだ。励ましのために好物を作ろうと思ったんだろう。

つわはす君とAの関係って正直よくわからない。

お互い助けあってる関係ってぐらい。

Aはつわはす君にすごい心開いているし最初は恋してるとかも思ったけどそれは無さそうだった。

だっていくら親しいからでも恋してる相手にあんなギリギリまで接近できるとは思わないし。

つわはす君はちょっと照れてるけどAは全く気にしてない。

俺とぶつかった時はちょっと焦ってたのに。……ということは意識されてる!?

いやいやそれもないな。だって前に「もう距離とか関係なくなる」みたいなこと言われたし。

Aのことは好きだ。

でもAが誰と付き合っても構わない。いや、一番は俺とがいいけどね？

俺のそばで笑って、泣いて、怒ってっていろんな表情を見せて欲しい。

でも今もそれは達成していてこれからもそうだろうから。

俺はただAを見ていられればいい。

少しでもAのそばにいられれば。

そんなささやかな俺の願いをぶち壊す人が出てくることを、その時の俺は知らなかった。