桜木ちゃんと刀の日和【刀剣乱舞】 (ページ6)

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肆話ページ6

『審神者というお仕事だって、お母さん。
お仕事だって。
社会体験ができるよ！』

「…」

『うちの学校バイト禁止だもんね、一足先に政府さん公認でお仕事ができるんだよ。

お給料はでますか？』

「ええ、出ます。
Aさんがちゃんと職に就いたその後に、銀行の口座番号を伺いに参ります」

自意識過剰でないことを祈るが、
お母さんは昔から、私のことを大切に大切に育ててきてくれた。

母子家庭でも頑張ってお金を切り盛りして、私は今まで特に不自由もなく育ってきた。

あまり心配をかけたくはない。

できることなら。

それでも受けちゃったことは仕方ないし、拒否権がないなら渋ったって仕方がない。

『お母さん』

お母さんの心配そうな瞳、表情
目がいつもより潤むのは、やっぱり心配してくれてるからだと思う。

『またきゅうりのお漬物を食べに戻るから』

「…そうね
神様が本当にいらっしゃるなら、そこまで心配しなくても大丈夫よね」

そう言って政府さんを一瞥した。

そして私に視線を戻して一言

「Aに何かあろうものなら本当に許しませんので」

「心得ております」

気付けば道路沿いに黒い高価そうな車が停まっていた。

そんな高価そうな車をそんな道路沿いに停めても良いのだろうか。

「ではAさん、詳しいお話は車内で行います。必需品はこちらで揃えますのでご心配なく」

『じゃあお母さん、
私がいつ戻っても良いように、きゅうりのお漬物用意しててね』

「わかった」

こんな別れ話があるのだろうか、この世の中に。
こんな突然、特に何の前触れも無く
大切な母と別れなくてはならない話が、この世の中にあるのだろうか。

まあ、多分きっとまたすぐに帰ってこれるだろう。

そうじゃないとやっていけない。

その時にまた、勉強道具とかも持って来よう。
きゅうりのお漬物も持って行こう。