肆拾伍話 ページ47
私は背筋をシャキンと伸ばしていたのを思い切り前に曲げて、
そのまま机に自分のおでこを思い切りぶつけた。
ゴン!
『いった…』
「だと思うよ」
後頭部を(恐らく)髭切さんに撫でられた。
手が大きい。
『皆さんのお茶が冷蔵庫に入ってるんで、ご自由にお取りください…』
机に伏せながらそう言うと、(恐らく)小夜さんがお盆ごと持って来てくれた。
机の上に置かれ、そこからお茶が全員の手に渡った。
小人さんたちにはまた後で持って行く。
「まさかまた主の“口から出まかせ”を拝めることになるとは夢にも思わなかったな…」
「何それ…」「前にもあったのかい?」「口から出まかせとは何のことだ?」
そんなに食いつかないでほしかった。
『…まあ
小夜さんを鍛刀した時に、こんのすけさんと手伝い札を使うか否かで揉めて…
その時になんとか相手を論破しないと、と思って…』
そう言うと「短刀の鍛刀時間は少ない筈なんだがな、心が狭いのだろう」
と、鶯丸さんが励ましてくれた。
「面白い駄洒落だね春鳥丸」
「ああ、ありがとう」
「いや訂正して鶯丸さん…
髭切さん、その刀の名前は鶯丸だってば…」
「そうだったね。ありがとう赤い子」
「覚えようとする気もないんだろうな…」
結構溶け合っている…
良かった、仲良くて。
机に伏せていた顔面を上げた。
背筋をゆっくり元に戻す。
「主、僕たちはもうお風呂から上がったから、もう入って大丈夫だよ」
『え、入り直さないんです?』
「丁度上がるところだったからね」
「うん、だから主も入ってきなよ」
「うんうん、気をつけて入っておいでね」
『あっ、じゃあ行ってきます』
着替えは浴場にあるっぽい。
私は皆さんのお言葉に甘え、お風呂があるところへ向かった。
_
「うーん」
「どうしたの髭切さん」
「…いや、なんと言えばいいかな…ねえ鳥丸」
「そうだな、空気が嫌に淀んでいる」
「だよね」
「…?僕には分からない」
「ね、俺にも分からない」
「だろうな」
「堕ちた刀の気配は、堕ちた刀にしか分からないよ」
「…ねえ、つまり、」
「ああ、この本丸内に
もう一振りが入って来た」
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作者名:雪だるま太郎 | 作成日時:2018年7月19日 22時