肆拾話_視点:加州清光 ページ42
「…………、
…、み……。
か……う、…。
加州清光」
『へぁっ!?』
全然可愛くない声が出た。
そんなことはどうでも良い。
焦った小夜左文字の顔と、辺りの暗さが目立つ。
『…何、どうしたの』
まだ眠気が取れていない。
そうすぐに分かるくらい眠そうな声で聞いた。
「主が居ない」
目が覚めた。
すぐに起きて、確認した。
…めくられた掛け布団、が、二枚。
『なんで…!?』
「分からない、敵意は感じなかった。
水でも飲みに行ってるのかと思って厨にも行った。
厠にも行った。
…でも、居なかった」
こんな…こんな突然消えることってある?
…待て、冷静になれ。
考えられる可能性を探せ。
…心当たりを。
俺は深く呼吸をした。
『…あの場所に行ったのかな』
「…え?」
『まだ鶯丸を治せてないから』
主ならやりそうなことだ。
寝てる俺たちを起こすわけにはいかないって、一人で。
…そんなの気にしなくて良いのに。
いつでも頼ってくれた方が嬉しいのに。
『行こ、小夜左文字。
取り敢えず動いた方いいよ。悩んで動かないよりも』
「…うん、分かっ、」
ブワッと、凄い量の霊力を感じた。
どんどん膨らんでいく気さえする。
いや、実際膨らんでいってる。
俺たちはその霊力に、確かな覚えがあった。
「加州清光」
『うん、主のだ』
枕元に置いてあった自分を取って、縁側から跳ぶ。
霊力を感じる方へ走った
月が綺麗だった。
小夜左文字は悩んでる。
『何、どうしたの』
「…主って、しばらくの間は安静にしてなきゃ駄目なくらい無理したよね」
『…うん』
「…何か神力も感じるし、
何か…絶対にとは言わないけど、良くないことが起こってる気がするんだ」
…俺もそう思う。
主、また無理したんじゃないかな。
どうも主は頑張り過ぎる節がある。
…俺の、元主みたいに病気で倒れちゃったりしないかな。
そんな心配が頭の中を駆け巡る。
杞憂であってほしい。
一直線の道は建物の姿をよく映させた。
近付けば近付くほど、その凄さを痛感させられた。
大きいし綺麗なあの霊力の凄さを。
主は
大きくて凄い、見る人が見れば圧倒される、満開の桜の樹みたいな人だと思う。
離の中から淡い桜色の光が見えた。
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作者名:雪だるま太郎 | 作成日時:2018年7月19日 22時