参拾伍話 ページ37
多分君が産まれるもっとずっと前
僕がここに顕現したのは、ここの審神者が二代目に代わってからしばらくしてからだったらしい。
だからごめんね、そこからの話しか詳しく話せないんだ。
あの…なんだったかな、緑丸なら知ってると思うよ。
二代目は刀を集めるのが大好きな人で、苦労して手に入れられた僕は、それからずっと近くに置かれたんだ。
僕は刀だからね、主人の近くで大切にされるのはすごく嬉しかった。
…のだけれどもね。
一代目の時からここに居る刀や、比較的手に入りやすい刀はあまり大切にされていなかった。
例えば…そんなことしないけど、僕が庭先でドジをして転ぶとする。
すると二代目は慌てて僕に駆け寄る。
特にどこも怪我してないのに手入れ部屋に突っ込まれる。
僕はこれだけ大切されていたのに対して、
さっき言った大切にされていない刀は
出陣で怪我をしてきても「資材が足りないから」と手入れを怠ったり、
そのせいで…破壊、されても「実力不足でしょ」と責任転嫁
…をね、されていたんだ。
だから僕は、どうしてそんなことをするんだろうって思ったから聞いてみたんだ。
彼らにも僕と同じように接するべきだとも言った。
「彼らと貴方じゃ価値が違うわ」
呆れたよ。
それはそれは呆れた。
僕の知ってる人間って、こんなのだったかな?って思ったね。
代替の品ができたらそんなに粗末にできるのかって、
僕らが一生懸命に頑張っても、この審神者は見ようともしない
ただ、他人に自慢をしたいだけなんだって。
腹が立ったから、僕は彼女が油断している時に斬りかかった。
二代目の最期は呆気なかったね。
三代目は霊力がとても強かった。
それに、油断も何もしない人でね、
僕らは抗いようが無かった。
一代目が居た時からここに顕現してた子は、「三代目こそ」って言ってたけれど
夢はすぐに崩れていってたよ。
政府に金を握らされて何かの実験に協力してた。
短刀の子を差し出してたね。
沢山の短刀の兄の……何だったかな、美味しそうな名前の子は、
毎度毎度壊れて返ってくる弟を見て辛かったろうね。
果てには耐え切れずに自刃していたよ。
出陣は
政府の指示する短刀を常に用意するための資材集めの時だけだったな。
身近な子が折れ続ける地獄は、彼が病死するまで続いた。
僕らはとても長い間存在し続けてきたけど、それ以上に
とっても長かったよ。
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作者名:雪だるま太郎 | 作成日時:2018年7月19日 22時