弐拾捌話 ページ30
ドン！と大きな音がして、何かが大きく崩れた音もした。
視線を優しい人から離に移すと、砂煙が上がっていた。
そして倒れる青い少年。
『、小夜さん！！』
「落ち着いて、彼はまだ折れてない」
行こうか、優しく微笑む彼は、何か安心できた。
私はできる限り強く頷き、傷の痛みも忘れて(いや実際とても痛いが)小夜さんの方へ走った。
『小夜さん！！』
「、！？」
小夜さんは私を見るなり複雑な表情をした。
手に握られた短刀の刃は少しこぼれている。
「何で戻って来たんだ…！僕は本丸に帰れって、」
『ええ、聞きました』
「じゃあ、」
「審神者の女の子、応急処置で雑な対応方法だけど手入れの仕方を教えるね」
私の背後から優しい声が聞こえる。
私は振り向かずにその方法に耳を傾けた。
「普通は資材を用いるんだけど今ここには無いからね。
彼の本体に手をかざす、そして霊力をありったけ当てる。
綺麗な心でやってみよう」
綺麗な心…？
綺麗な心は分からないけど、刃こぼれした小夜さんの本体に両手をかざした。
霊力の扱いは未だよく分からない。
でもきっと、加州さんや小夜さんを実体化した時と同じような感じなのだろう。
治れ…治って、治ってくださいお願いだから。
ひたすらそう願うと、小夜さんの刀が輝き始めた。
淡い光だ。
「ああ、成功したね。良かった良かった」
『良かったです…』
「霊力を沢山消費させるし、すぐに治るわけじゃないから集中＿＿
ありゃ、治ってるね」
小夜さんの刀は綺麗になった。刃こぼれが無い。
当の小夜さんを見てみると、それはどういう顔なのだろう、という顔を
私と優しい人の交互に向けていた。
「さて、…おや、彼らも出てくるね」
わざわざ入る手間が省けた、とのんびりした口調で、その手を腰の刀にかけた。
その直後に、小夜さんが飛ばされてできた大きな穴から加州さんが飛ばされてきた。
「ありゃ、重傷だね。よく頑張ったねえ」
優しい人は加州さんを見るなり、やはりのほほんとにこやかに言った。
「審神者の女の子、やり方は覚えてるね？」
『はい』
「うんうん、物覚えがいいね。安心したよ。
じゃあ、」
先程までののんびりさは何処へ消えた。
ゾッとする冷たさに思わず怖気付く。
それを合図に離の中からあの刀剣男士が出てきた。
「そういうのは、任せたよ」
彼の表情から笑みが消えていた。
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作者名：雪だるま太郎 | 作成日時：2018年7月19日 22時
