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弐拾話 ページ22

さっきまで布が当たっていたところがスースーする。

思い切りが良かったために、前を留めていたボタンが弾け飛んだ。

近くても手が届かないところまでボタンが飛んだようだ。
カシン、といった音がする。




『な、何を』




恐怖の対象がすぐそこに居る。

恐怖の対象が服を取った。


口が上手く動かない。声が震える。



私は先程はっ倒されたので、必然的に相手を見上げる形になっている。

相手は私の上に乗っているので、必然的に私を見下げる形になっている。



光が微塵も届かないので、昼であっても何も見えない。


ただ相手の息遣いから
相手は余裕の笑みを浮かべていることだろう。




「さあなあ」


『ど…うして、こんな』


「今分かる」




明らかに近い位置から…そうだな、例えるなら、鋭い物を硬い筒から抜き出すあの音が。

そう、RPGなどで勇者が伝説の剣を曰く付きの岩から引き抜く時のあの音が。


あの音が聞こえた。



身の危険を感じる。
さっきよりも強く、本能が警告している。

抵抗しなければ死ぬ。



幸い腕から手までが全て自由に動ける。

拘束されているのは私の身体だけだ。




私は、思い切り右腕を振った。







パチン。






掌が丁度よく…頬のようなものに当たった。
いや間違いなく頬だった。


ビンタが繰り出せた。



少し姿勢がぐらついた。

のを、先程自分で引き抜いた…おそらく刀であるものを地面に突き刺したのだろう。

体制がすぐに整った。




「…痛いじゃないか」


『私の肩の方が痛いです』


「はは、もっと痛くしてやろうか」




そう言うや否や、先程とは逆の方の肩に、先程は無かったぬるりとした何かを這わされた。


あまりの気持ち悪さに震える。





「あまり粋がるなよ、人の小娘。

先程お前は、自分の肩の方が痛いとほざいたな?」


『…、』


「答えろ」


『い、いいました』


「そうか」




彼はそう言うと、痛い方の肩を
ガッ
と掴んだ。




『ッく、ううぅぅうぅ、』


「俺たちはこれよりも散々、痛い思いと辛い思いをしたんだ。

主君とした審神者に、それはそれは非道卑劣なことをされたし見せられた」




これ以上の辛さをお前は知っているか?

話しながらも私の肩を弄るのは止めない。
親指らしきものが私の傷口を開けている。


歯を噛みすぎて口も痛い。




ここに追い打ちとして
逆側の肩より「サク(バキョ)、」という音が聞こえる。

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作者名:雪だるま太郎 | 作成日時:2018年7月19日 22時

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