拾玖話 ページ21
*
私がその戸に触れると、札が全て剥がれ落ちた。
その札の数は決して少なくなかった。
中は暗い。
明かりが入るところが無いから、きっとこの戸を閉めれば全く見えな、
トン。
そんな戸が閉まる音がして、中は真っ暗になった。
私は中に閉じ込められた。
『…あ』
ここでようやく身体に自由が戻ってきた。
手も足も自分の思う通りに動かせる。
そうと知ったらまずはここから出なければならない。
急いで戸に手をかけた。
『！？』
だが開かない。
さっきはあんなに軽く開いたのに。
なんで？
恐怖心が膨らむ。
そもそもこの建物は何？
どういう場所？心霊スポット？
まさか！
神様がいるところにそういうのは無いでしょ…
無いよね？
「そうだなぁ」
『っ！』
すぐ真後ろから声。
誰？
誰？
誰。
私の知る声ではない。
男性の声だ。
右側に、壁に手をついたような音がした。
左側も同じく。
開かない戸に追い込まれた。
背後から吐息がかかる。
「俺は、霊ではないよ」
耳元。
嫌な感触。
背筋が凍る。
息が早くなる。
鼓動も早い。
体温が冷えていく。
「俺は、ここの刀剣男士だ」
彼は私の耳元でそう呟いた直後、
私の肩に手を掛けて、物理的に裏返した。
つまり、今は目の前に誰か分からない人が居るわけだ。
『刀剣男士…？』
「嗚呼。
お前は審神者だろう？駄目じゃないか、弱味を見せては。
背後を見せれば斬られるぞ」
『ッ…』
首を掴まれた。
苦しい。息がし辛い。
そのまま戸から引き離され、真横の位置に押し倒された。
背中が痛い。
…いや、それより
私、自称刀剣男士の下にいる。
自称刀剣男士が私に馬乗りになっている。
マズイ気がする。
心底マズイ気がする。
と思ったのも束の間
『い"ッ…！！』
右の肩に激痛が走った。
何が何だか分からない。
何、私は今何をされてるの。
…いや、
さっきの瞬間、なにか暖かいものが私の肩に触れていた気がする。
…噛まれた？
いや、…喰われた……？
服の上から…布ごと？
なんで？
「存外不味くはないな…」
やっぱり、喰べたんだ…
すぐ近くで「ゴクリ」と不快な音がする。
そのすぐ後に何かを吐き出す音もした。「フッ」、と。
……今、彼は笑っている。静かに笑んでいる。
そんな気がする。
。
。
突然のことだった。
頭が回らない。
私の服が破かれた。
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作者名：雪だるま太郎 | 作成日時：2018年7月19日 22時
