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玖話 ページ11

チラッと職人さん方の方を向いた。
作業は続いているものの、期待のような何かはすごく私に向いていた。


加州さんは全然口を挟まない。

こんのすけさんも多分私がどう言おうと何かしらの返答はしてくるだろう。


…こんのすけさんがわざわざ私に札を使わせようとするのは、こんのすけさんには使えないからだと見た。

政府の人は私を「有能な人材である」と言った。


であれば、私も奥の手を出そう。




『…分かりました、こんのすけさん』



「ええ、時間も押してます故、」



『私にはこの大仕事は務まりません。
どうぞ他の方に変更してください』



「「えっ!?」」


『このお仕事、辞職させていただきます』




これには流石に驚いたのか、こんのすけさんはもちろん加州さんも驚きの声を発していた。




「どっ、どうして」



『どうしてと言われても、ねえこんのすけさん。
お仕事といえば信頼関係も必要でしょう。私はそう習ってます。良い職場っていうのは信頼関係も大切なんですよね?』



「そうですとも!その為にですね、」



『私はまず
お仕事をするにあたって大切な方と信頼関係を築きたい訳ですよ。
このお仕事には御刀の付喪神様が必要なんでしょう?

ではその御刀を鍛刀できる方の信頼を得なくてはならない訳ですよ。こんのすけさん』



「それなら後から、」



『後から?本当ですね?本当なんでしょうね。
そのお手伝い札とやらで無理矢理ブラック企業にしておいて、その後本当にホワイトにできるんでしょうね?心の傷はちゃんと癒えるんでしょうね?』



「…」



『その信頼関係をですね、築く意志からですね、上司の方が潰そうとお考えならですね?私は今後ここで働くのは困難になると思うのですよ。少しでも新参のうちから失敗したくないわけですよ今後の為に。
失敗から学ぶこともあると思うのですが、明らかに失敗すると分かっていることに足を突っ込みたくないわけですよ。

新人だから仕方ないというのは学生までなのですよ。
貴方がたが私の学生生活を奪ったんでしょう?でしたら私はもう立派な社会人ですよ』



「…はぁ」




こんのすけさんの顔は心底面倒くさそうだ。
これだから大人は。




「分かりました。辞められてしまうと仕事に支障が出ます。

ですがその信頼関係とやら、今のお話で私とのそれは破れたということ、頭に入れておいてくださいね。

ではまた後ほど」




ボフン

と煙が立ち上った。






疲れた。

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作者名:雪だるま太郎 | 作成日時:2018年7月19日 22時

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