よんじゅうに ページ6
だんだんと慣れてきているその山道を、Aは早足で下っていた。その表情はいつもよりも機嫌が良さげだ。
学年2位という順位はこの学校では胸を張って自慢できる成績である。
あのむかつく理事長の息子、浅野学秀を追い抜くことは流石に難しかったものの、自分をA組最下位だと見下し嘲笑った他の五英傑共を自分よりも下に叩き込めたことにAは満足していた。
本校舎の五英傑はというとAに負けた榊原ら4人は返却された答案用紙を見て、目を見開きワナワナと震えていた。
当たり前と言えば当たり前だ。自分よりも下だと思い、貶してきた相手が突然上に這い上がり、自分を見下ろしているのだから。
五英傑を見返すべく子供じみているとは分かっていたが、Aはとてつもなく勉強をした。普段も復習などはしていたがそれ以上に勉強をしたのだった。
無事目的達成(?)し、Aは4人の悔しそうな顔を思い浮かべるとニヤケが止まらない。端から見るとただの無表情であることには変わりないのだが。大声で高笑いして「ざまぁみろ」と言ってやりたかった。しかし、慢心はいけないので、次も頑張ろうと思い直した。
自宅にたどり着き、玄関のドアを片手で開けて「ただいま」と小さく口にした。いつもは元気そうな真冬の「おかえり」が聞こえるのだが、ライブも迫ってきているので忙しいのか、と思いAは静かに靴を脱いだ。
リビングへ入ると人が居る気配は感じない。きっと自室に籠もって作業だろう。
何か小腹が空いたときのために軽いものを作ろうと、Aはキッチンへ行った。
作ったものは冷凍していた白米で作ったおにぎりだ。軽く塩を振ったのでちょうど良いしょっぱさになっているはず。
ついでに今日の夕飯のためにさっと米を研いで炊飯器にセットし、ボタンを押した。
これでよし。そう思ってAは握ったおにぎりとスクールバッグを持って二階に上がっていった。まだ着替えてもいなかったのだ。
真冬の部屋の前に立ち、拳でコンコンと2回ノックすると「はーい」という軽い返事が聞こえてきた。静かにドアを開けて入ると少し部屋は散らかっていた。
振り向いた真冬の顔には少し疲れが出ており、目の下が薄く黒くなっている。
「あ、A。おかえり。」
「・・・ただいま。作業?」
「うん。なかなか終わらなくて。」
短く会話してからAは「徹夜はいいけど体は壊さないでね。」とぶっきらぼうに言って、おにぎりを手渡した。真冬はありがとう、とへらりと笑う。
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あげは - 面白いですね! 更新楽しみにしています! (2017年9月28日 21時) (レス) id: c30b30fba1 (このIDを非表示/違反報告)
春星 千風波 - 頑張れ。です。更新待ってます、殺せんせーが地球を滅ぼすまで。スマホ握りしめて。 (2017年9月4日 13時) (レス) id: 0c4f4061b2 (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 大丈夫ですよ!!更新応援しています!!ですが、あまり頑張りすぎないで下さいね?たまには休息も大事ですので!(^^*) (2017年4月10日 19時) (レス) id: b02b0b0ebf (このIDを非表示/違反報告)
麗香(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます!これからどうなるのか、自分でなんとなく考えたりはしているんですが、文章にしようとするととてものろまになってしまうので申し訳ないです。更新頑張ります! (2017年4月9日 16時) (レス) id: 35baa39e01 (このIDを非表示/違反報告)
麗香(プロフ) - もっち〜♪さん» コメントありがとうございます!これからも見てやって頂けると光栄です! (2017年4月9日 15時) (レス) id: 35baa39e01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麗香 x他1人 | 作成日時:2017年1月27日 20時