勝負~俺のがん細胞くん~

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渡辺side







『 俺らってさ、色々と勘違いされやすいんだよな。例えば、これ欲しいって言っても、そんなんでいいの？って。遠慮しなくていいよ〜って。』

深｢ うん… ｣

『 でもね、本当に欲しいって思ってるものなんだよ。他の人からしたら小さなことかもしれないけど、俺たちは嬉しいんだよ。』








だから今回、

弟くんがお兄ちゃんの大学進学を勧めることだって。



お兄ちゃんからしたら

俺のために……とか考えるかもしれないけど、



確かにそれもあるかもしれないんだけど……








『 弟くんの望みが、叶うといいなぁ… 』








俺と同じように

弟くんも、お願い事をするような人だったら。



弟くんが考えるお願い事の1つが、

お兄ちゃんの大学進学、だったとしたら。








『 まぁ……ただの憶測でしかないんだけどね。笑 』








大学進学って、いつも俺が考えるみたいな

しょうもない願い事じゃないし。笑




でももしそうだったとしたら、


本当に遠慮してるのは

実はお兄ちゃんの方だったりして。









『 ちゃんと2人が幸せになれる方を、選んでね。』









お兄ちゃんの

今は閉ざされた心の声を聞いてみて。



決めるのは、その後でいいんじゃない？








深｢ そっか……そうだよな。もう一度しっかりと考えてみるよ。｣

『 お役に立てたらいいんだけど、』

深｢ 君のおかげでなんか勇気が湧いてきた。
ありがとね。｣









ふっかお兄ちゃんは、


俺の頭に手をぽんと置いて

病院の自動ドアに向かって行った。








深｢ 君も、早く元気になるといいな。｣








その途中、ふと振り返って俺に笑いかける。



うん、ありがとう。

お兄ちゃんも、弟さんもね。








『 早く元気に、かぁ… 』








俺は、小さな声でそう呟く。




隣を見ても、ラウールは俯いていて

視線が交わることは無かった。

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