繋ぐ~心に傷を負ったこどもたち~

＊ ページ36

渡辺side






パトカーに揺られながら、さっきのラウールの言葉が頭の中を駆け巡る。



＿＿＿嘘つき




『 そうだよな、やっぱそうなるよな…… 』




ラウールは、あの家にいた時から、｢ 約束 ｣という言葉に囚われてきた。


ラウが大事にしているその｢ 約束 ｣という言葉を、
あの母親は、｢ 部屋から出ないこと ｣として悪いように使ったけど…



だからラウは、ギリギリまでその約束を守ろうとしてた。





…そして、今回の事件。



“ ラウールを悲しませるようなことはしない ”
俺、そう言ったのにな…







実を言うと俺は、あぁは言ったものの
全く納得していなかった。


ラウールをあんな親のところに返す訳には行かない。


だから、ラウールの今までの苦悩の人生をちゃんと話して、あの母親を絶対にラウールに近づかせない。




｢ …大丈夫ですよ。 ｣

『 え…？ 』




俺が意思を固めて拳を握りしめた直後、隣に座った警察官から急に話しかけられた。




｢ 貴方は署でお話を聞いた後、すぐに家に帰れま
す。｣

『 …… 』

｢ ラウールくんも、母親の元へ戻ることはありませ
ん。 ｣




……え？
母親の元へ戻ることはありません…？




『 それは本当か？本当なのか？！ 』





つい感極まって肩を掴んで問いただすと、警官はへなりと苦笑いをうかべた。





｢ 本当です。…実は、あの母親から通報がある前に、｢ 虐待されているかもしれない｣と、通報を受けていたんです。あのアパートの大家さんから。 ｣


『 あ… 』


｢ 大家さんもずっと気にされていたそうで。ただ実際に見た訳でもなく、確証が得られず今まで通報しなかったんだと……もっと早く気づいてあげればよかった、と涙を流されておりました。 ｣


『 良かった… 』

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