飴ちゃん ページ38
．
藤原side
人生 そんなに毎日うまくいくわけやない。
だからといって、
人に当たるのは間違ってるってわかっとる。
せやけど、
うまくできひん自分にイラついて、
そんな自分にもイラついて、
メンバーがおるのに
最悪なオーラを出してしまっていた。
貧乏揺すりをする足も止められへん。
そんな俺に誰も近づこうとしないし、
自分で言うのもなんやけど、それが正解やと思う。
そんなときやった。
コトン、と、小さな音をたてて、
目の前のテーブルにものが置かれた。
A「飴ちゃん、よければどうぞ」
目線をあげた先には微笑むAがいて、
もう１度テーブルに目線を戻している間に
｢みんなもほれ〜｣ と、俺の遥か遠くにおった
他のメンバーに配り始めていた。
｢おいしいから舐めとき〜｣ なんて
言いながら配るAにみんな戸惑いつつも、
そのお陰で少し空気が和んだ気がした。
その空気を悪くしとったのは俺なんやけど。
メンバーに向けていた目線を
テーブルに置かれた飴ちゃんに戻すと、
｢まだあるけどいりますか？｣ と、
メンバーに飴ちゃんを配っていたはずのAが、
ちょこんとしゃがんで、
テーブルの上に顔だけを覗かせていた。
藤原「ん･･･、そんなにはいらんかな。ありがとう」
そんな様子に口元が少し緩んで、
自分が思っていたよりもずっと穏やかな声が出た。
A「ふふ、丈くん笑った」
藤原「･･･え？」
A「たまには子どもっぽい丈くんもありですねぇ」
そんなことを言いながら立ち上がったAは、
控えめに頭を撫でてきた。
見上げればAが優しく微笑んでいて、
ぐいっと腰を引き寄せてお腹に顔を埋めてみる。
すると一瞬固まって、
またすぐに頭を撫で始めてくれた。
遠くで大橋とか謙杜が騒いどったり、
シャッター音やら
録画ボタンを押す音が聞こえたけど、
今日くらい
うちの紅一点に甘えてみようかな、なんて。
もちろん空気を悪くしてしまったことは
そのあとしっっっかりと謝って、
たまにはAに甘えてみるのも
いいかもしれなくもなくもないと思った１日やった。
･･･あ、キャンディーをそっと渡すの、
意外とありかもやで？
．
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作者名：まる。 | 作成日時：2020年5月10日 23時
