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第三十八話 ピロ・ラッキーハッピー ページ39

 廃教会に入った。
「いやぁ、酷い目にあった」
 ここで唯一壊れていない長椅子に腰掛ける。
「お前さんはいつもの事だろ」
 ワタシにそう言ったのは、この廃教会の元神父である老人だ。言葉遣いや身なりからすると、その見る影もないが。
「ナイフで刺された上にホテルを追い出された。また、ここを宿としてもいいかね?」
「断ってもそうするだろう。あと、まだ背中に刺さっているぞ」
「おや、気づかなかった。悪いが抜いてくれないか?」
 自分の見える範囲になかったので、その老人にナイフを抜いてもらった。
「またどうして刺されたんだ?」
「わからない。普通に話していただけなんだがね。突然、友人が刺してきた」
「そりゃ友人とは言えねぇな」
 老人は懐から葉巻を取り出し、火をつけた。ワタシの話を聞く時、彼はよくこうする。
「いや、友人さ。その彼が女絡みで騙されて金を盗られたらしくてね」
「なるほどな」
 すぱーっと彼が吐き出した煙が薄く広がる。
「ワタシはそれについて意見したのだよ。無論、ワタシは正しい事しか言っていない。だが、この通り刺されてしまった」
 しかも、ワタシが被害者の刺突事件がそれで3件目、全てホテルで起こったものだから、今日ついに追い出された。
「まぁ、お前さんは概ね正論しか言わないからな。だが、その正論には毒がある。お前さんは無自覚なんだろうがな。普段のお前さんにも人はイライラするんだ。悲惨な目に合った時なんて、殺したくもなるだろうよ」
「殺せないのに?……できないと分かっていてやろうとするとは、愚かな……いや、ワタシが天才なのか」
「はは、そういうところだよ。正しいが、ズレている。悪気はないのに毒がある。本当、お前さんは頭がおかしいね」
 くっくっ、と笑う老人。そして「そうそう」と呟いて、何かを取り出した。
「そんなお前さんにいいもんを見せよう」
 それは1枚の紙だった。
「今朝、この教会の壁に張り付いてやがった」
 そこには、世界を繋ぐ仲間を募集しているとあった。
「今更そんな事をしようだなんて、頭がイカれてるだろう。同じイカれ者同士、参加してみたらどうだ?」
『誰がイカれ者だ』
 紙から声が聞こえた。これは面白い……
『その老人から、汝なら参加すると聞いたが。参加するか?』
 迷う必要はなかった。こんなに面白い事はないだろう。
「あぁ、参加しよう」
 魔法陣が展開する。足を踏み入れる。
「では、しばし然らばだ」
「二度と会いに来なくていいぞ」

第三十九話 フィル・ライトハーテッド→←第三十七話 ライ・ハルバード



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設定タグ:募集企画 , ファンタジー , 小説版   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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夕暮れの紅猫(プロフ) - 浅葱_なずさん» 一応、続きがありますよ! (2017年9月5日 1時) (レス) id: bc75671915 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱_なず(プロフ) - 凍結でつか(*゚▽゚) (2017年9月4日 22時) (レス) id: 638a6231c6 (このIDを非表示/違反報告)
夕暮れの紅猫(プロフ) - 欺瞞と悪戯の神・ロキさん» ありがとう! (2017年7月22日 17時) (レス) id: bc75671915 (このIDを非表示/違反報告)
欺瞞と悪戯の神・ロキ - 遅くなりました!直したよ! (2017年7月22日 16時) (レス) id: 55b7b486eb (このIDを非表示/違反報告)
欺瞞と悪戯の神・ロキ - 夕暮れの紅猫さん» わかった!何とかしてそれにする!僕の事はためでいいよ! (2017年7月21日 22時) (レス) id: 55b7b486eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ステラどるちぇ x他14人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年5月28日 20時

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