孤独な天才5

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『ん……』

月島「あ、起きました」

…頭痛い

お腹気持ち悪い

目を瞑ったままうつ伏せになり

枕に顔を埋める

『………いつもと匂いが違う、ここどこ』

黒尾「お前は犬か」

夜久さんの匂いがしない

ボールドの匂いがしない

赤葦「海外の別荘だよ」

『海外？』

バッと顔を上げ辺りを見回す

すると

窓の外に透き通る海が見えた

いつもは森なのに

『私が寝てる間に来たの？』

黒尾「起こそうとしたんだが起きねーから」

それは私が悪い

…で

『どーして急に？』

何かまずいことがあるのか

みんな目を逸らして黙り込む

私には知られたくないことがあるのだろう

黒尾「それは…『気分転換とか言ったらぶっ殺すよ』…」

複雑に結んだ髪をほどきながら立ち上がる

ドレスのままだったので動き辛い

しかもヒール履いたままだしな

ヒールを脱いで手に持ち替える

黒尾「…あー、わかったよ、悪かった」

『…』

黒尾「狙われてんだよ、お前」

『…………え』

予想外の言葉に固まる

私が？

狙われてる？

『誰に』

黒尾「……」

なぜ黙り込む

『わかったわかった、もういいよ』

お酒のせいなのか

気持ちがだるい

どーでもよく思えてきた

いや、怒ってるからか？

『風呂入ってくる』

黒尾「A！」

しばらく立ち止まって

ゆっくりと後ろを振り返る

『……なに』

黒尾「…わりぃ」

『なんで謝るの』

黒尾「…まだ何も言えねーけど、気ぃつけろ」

何をそんなに怖がってるの

あの黒尾が

なんでそんなに不安そうな顔するの

『…っ！！』

黒尾「ふがっ！！」

持っていたヒールを黒尾めがけてぶん投げてやった

『私のこと誰だと思ってんの？そんな弱いヤツを見る目で見ないで』

黒尾「A！違っ…」

『まだいうか』

黒尾「おべっ！！」

もう片方のヒールも投げてやった

『今度はかんざしを目に指すぞこの野郎』

黒尾「わかった！！わかった！！俺が悪かったよ！！」

鼻血を出しながら涙目で叫ぶ黒尾

わかればいいんだよわかれば

『…ま、気をつける』

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