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「Aちゃん！？」
「いたた……私どうなったの？」
「廊下に転がってたバナナの皮を踏んで転んじゃったんだよ。僕危ないって止めたのに……なにか考え事？」
「いや、何も……」
「嘘だ、Aちゃん一度自分の中で考え事はじめると僕の声聞こえなくなるからな〜」
足元を確認すると確かにバナナの皮が転がっていた。誰だよ校内でバナナの皮ポイ捨てしたやつ。
それよりも周りの声がそこまで聞こえてなかった事がショックだ。彼の言葉はなんだって聞きたいのに。
「立てる？ 医務室行けそう？」
「……ごめん、腰ぬけちゃった。少し休んでから行くから、しにーは師団行って」
「もー、Aちゃんを一人置いていけるわけないでしょ！」
「でも師団行くの遅くなっちゃうよ」
「いいよ今日ぐらい、一日ぐらいサボったって平気！」
そう言って笑う彼に心が熱くなる。また、一層彼を好きになってしまった。友達を一人にしない優しい所も好きだなぁ。思わず赤くなる顔を隠そうと下を向いて、腕の力で立ち上がろうとする。それでも腰はまだいうことを聞いてくれなくて、教室に這って戻るしか出来なかった。
僕がムキムキだったらAちゃんを抱っこして医務室までかっこよく連れていけるのに、なんて彼はおろおろしながら言ってるけど、ムキムキのしにーは面白すぎるし抱っこは心臓に悪いから彼が出来なくてよかった。
放課後の教室は静かで好きだ。いつもより彼の声がよく聞こえるし、視界に彼しかいないもの嬉しい。こんな情けない状況じゃなかったらもっと良かったのに。
「ごめんねしにー、今度お礼させて」
「気にしなくてもいいのに。でもお礼か……じゃあ一つお願いしてもいいかな」
「なんでもするよ、私に出来ることだったら」
「僕とデートしてください」
そう言って彼は優しく私の手を取った。廊下を這ってきた手だから汚いよとか、彼の手が意外に硬くゴツゴツしていてびっくりとか、そういう事が頭に浮かんではすぐ消えた。
デート？ 私と、しにーが？ それは友達として出掛けたり美味しいものを食べることとは違うの？
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作者名：!! | 作成日時：2023年6月3日 11時
