僕でいっぱいにして/sngm ページ21
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「ねぇ、しにー？ あそこのブランドの新作見た？」
「まだ見てないかも」
「ほんと？ ネイルの色展開が可愛かったよ、しにーに似合いそうな紫もあった」
「マジ！？」
学校でおはようの挨拶をして、先生が来るまでの短い自由時間。これから勉強をしなければいけないという、悪魔によっては憂鬱なこの時間。でも私にとっては癒しの時間だ。
隣に座る可愛らしい彼はしにがみゅ、私の一番の友達。彼とは入っている師団が違うので放課後までが私たちの時間だ。
「今度の休日に見に行こうよ」
「いいよ、Aちゃんに似合う物も見つけよ！」
「私はいいよ、きっと似合う物無いし。それよりこーんな可愛いしにがみゅをもっと可愛くしてくれるものが見たいな」
「そんなこと、ないと思うけどなぁ」
ちょうどいいタイミングで先生が教室に入って来てくれて助かった、このまま話を続けていたら自己嫌悪が止まらなくなってたもん。
隣に女の子より可愛い好きな人がいたら、自分にどんどん自信が無くなっていってしまった。誰のせいでもない、しいて言えばそんな卑屈な自分のせい。
彼より可愛くなれたら。自分に自信があれば。そんなたらればが邪魔をしてつい恋心を隠してしまう。
しにーは見た目が可愛くて話も面白くて男女共に人気があるから、いつか素敵なパートナーを見つけるんだろうな。そうなった時、私はこの気持ちを上手く隠しながら友達を続けられるんだろうか。
そんなことを考えていても考えなくても彼といる時間は早く過ぎるもので、あっという間に放課後となってしまった。
彼が所属する日常師団が何をしているのかは、私にもよくわからない。けど彼が毎日楽しそうに師団室に向かうんだからきっと楽しいところなんだろう。彼ともう少し出会うのが早かったら、私も一緒に入りたかった。
またね、また明日、とお互い手を振り合って今日は終わりだ。また明日、と言ってくれる彼の優しさが嬉しくて。今日もいい一日だった。
と、一人頭の中で今日を終わらせようとしていたら、足元が急にぬめっとした。ぬめ？ なんだろう、と確認する前に体勢が崩れ視界が回転する。次に体の痛みと、彼の心配そうな声が耳に届く。
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作者名：!! | 作成日時：2023年6月3日 11時
