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「ちょっとずつでいいんだよ、一気に食べると私でもむせるから」
「ええい！ ちまちま出来るかい！」
「あー！」
「……アー！！」
目の前の赤い油を全てぶちこみ、おおざっぱに混ぜてから口に含んだ。次の瞬間脊髄反射で出た叫び声に自分でも驚きつつ、口の中と食道をこれでもかと苛め抜かれ続け叫び声も止まらない。辛い、辛いからいからいうまい！ 冒涜的な辛さの奥深くにうまみが隠れてやがった、これはしてやられた、くそう箸が置けねぇ！
「ああ、そんな無茶するから……辛いでしょう？ 食べるのやめていいよトントンくん」
「いえ！ 辛いんですけど美味しくて！ 箸が置けねぇっす！ 限界まで食べたい！」
「無理はしないでね、でもそう言ってくれると嬉しいな。トントンくんに試食頼んでよかった。時間はたっぷりあるから、ゆっくり食べてね」
「ありがとうございます！ ゲホッ……でも、タダでこんなにいただいていいんですか？ 普通にお金払いますよ」
「いいの、頼んだのは私だし。それにあなたが美味しそうに食べてる姿を見るのが好きで、あなたの笑顔が一番の報酬よ」
優しくそういった先輩の表情は生理的に出た涙で良く見えへんかった。それでも声色はいつも以上に優しく慈愛も感じられる。いろんなところから汁を垂れ流してる俺によくそんなこと言えるな。
欲望まみれのこの魔界で、こんなに優しい悪魔がいるなんて知らへんかった。先輩がこんなに優しいから料理もうまいんやろう、きっと、知らんけど。そう言われたらますます完食せえへんと失礼ってもんだよな、トン、俺頑張るから応援しててくれ。
「全部食べ切れたら、ご褒美のシャーベット魔イスもあるから。がんばれ、トントンくん」
「しゃ、しゃ、シャーベット！？ 聞いてへんよ！？ ほなもっと頑張らな……！」
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作者名：!! | 作成日時：2023年6月3日 11時
