悪魔のグルメ/tn ページ18
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休日の繁華街はそれはそれは賑わっていた。家族連れで賑やかな微笑ましい悪魔たち、カップルでデートをするうらやまけしからん悪魔たち、そして一人目的のお店へ向かう俺。
今日はいつもつるんでるアイツらには声を掛けていない。先方もきっとそのつもりやろうし、賑やかすぎるアイツらを連れて行ったらご迷惑になるだろう。そう、今日会う悪魔には迷惑をかけたくないのだ。
繁華街の端にある、少し年季の入った建物。赤い暖簾が内側に掛かっているということはこの稼ぎ時の休日に店を閉めているということ。来てと言われた店が閉まっているなんて想定外だが、換気の為か扉が少し開いていて中から嗅ぎなれたいい香りが漏れ出しているんだからきっとここで間違いはない。扉に手をかけ、ゆっくりと開きながら俺は中にいるであろう悪魔に声を掛けた。
「あ、いらっしゃいトントンくん。遠くなかった？ わざわざありがとうね」
「いえ……でも店を閉めているなんて思ってなくて、少し驚きました」
「ああそれね、実はお母さんが倒れちゃって……私だけじゃお店開けられないから」
カウンターの向こう側、調理場に立つのは食物師団の先輩のAさん。今日は彼女に新メニューの試食を頼まれ、先輩の実家であるこのお店に来たのだ。先輩はかなりの品数を作っているのか、俺をカウンターの真ん中に案内してからも忙しそうにあっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。
とりあえずお冷を貰いながら店内をぐるっと見渡すと、照明がついていないからなのか悪魔が二人だけだからか寂しい印象を受ける。でもきっと開店していたらここに様々な悪魔がひしめき合って、食器がぶつかる音や咀嚼音、楽し気な話し声が溢れて止まらないんだろう。そう想像してしまうくらい先輩の料理はとても美味で、リピートしたくなる。
「とりあえず出来てるものから出すね、味が薄かったり量が少なかったりしたら言ってほしいな」
「うっす。じゃあ、いただきます」
魔界の様々な植物を使ったサラダと、魔鳥の味付け卵か。まずはサラダからやな……うん、シャキシャキしてて鮮度にこだわっているのが分かる。魔クラゲが入っているのか、食感も飽きなくて楽しい。ドレッシングは敢えての香ばしいシンプルなものか、やっぱり先輩はわかっとる……！ これから色々なメニューをいただくんやから、サラダはシンプルでええねん。
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作者名：!! | 作成日時：2023年6月3日 11時
