恋だ、って叫びたいのに！/ pe ページ10
Peさん×女の子
彼女の前でだけ声がちっっっっさくなる彼の話。
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家系能力とは、少しばかり厄介なものである。ロマンも夢もあるが、自らとは決して離れない。
万能である能力も限られた場所で華開く能力もみな一様にその【家系】が生きた証拠であるが、魔界に生まれてバビルスに入学するまでしか生きていない、言わばひよっこ悪魔達には身に余る力とも言えよう。
実際、能力を生かすことも殺すことも出来ずに暴走し、大人たち…先生の手を借りて鎮圧するような事件──悪魔たちにとっては突発的な祭りのようなものである。後々ネタにして笑えるし──だって毎年恒例くらいの勢いで起こっている。
なぜ今こんな話をしたのかと言うと…。
「誰がこいつを黙らせろ！！」
「えっ！酷くない！？！？」
同じクラスの隣の席…ちょっとした有名人の彼──ペイントくんのせいである。
彼は大変純粋で優しく、変な話気のいい悪魔であるのだが何せ声が大きい。それはもう、とても大きい。しかも一重に家系能力のせいという訳でもないのがまた厄介で、素でこれであるが故に一度騒ぎ始めるとクラス全員で彼を黙らせにかかる程。
興奮、恐怖、驚き、果てには強い喜びでさえも声を大きくする為ちょっとした刺激も与えるなとネタになるくらい彼の声は大きいのだ。
大体は彼と同じ師団のシニガミュくんたちが回収するか、誰かが購買に走り高周波阻害マスクを買ってきて彼に叩きつける。
もしくは────。
「頼んだ、A！」
『…ん』
あまりにも雑な扱いに、涙に鼻水にとぐちゃぐちゃになった顔で酷い！と級友へ泣きつくペイントくんは少し不憫だ。それを泣きつかれている側は無遠慮に彼を引き剥がしこちらへ流してくるのは最近のお決まりである。
私はひとつ了承してからカタリと音を立てて立ち上がり、そっとペイントくんの元へ近寄る。それだけで尻尾を揺らした彼はいよいよ私に慣れてきてしまったのかもしれない。
『ペイントくん』
わ、わ！！！と慌て始めるペイントくんを自慢の尻尾でゆるく囲って引き止める。わざと彼のそれに先を通すようにすれば先程までの騒ぎはどこへやら。
『お口、チャック…ね』
「………、ﾋｬｲ…」
「声ちっっっさ」
「マジかペイント…」
彼が細かく何度も私に頷いてみせる。
そんなにしなくても、怒っている訳では無いのに。彼は本当に素直な悪魔だ。
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作者名：!! | 作成日時：2023年5月28日 12時
