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『...落ち、てた？』
「落ちてた」
私がついオウム返しすると、彼は言い聞かせる様にもう一度同じ言葉を言う。
落ちるって...確かに、思い返すと足を前にして飛んでた様な...？
「ほら、今度収穫祭あるでしょ？それで...ンンッ！この私、天才Dr.キリヤンの華々しい発明品をお披露目しようと準備していてね！」
『発明品？』
「そう！それがこの魔具！“魔重力ばらばらくん”だッ！？」
そう言うと、彼は錨の様な形の魔具を上に掲げる。と、それと同時に魔具がクイッと傾き、キリヤン君は天井に強く打ち付けられた。
…わぁ、痛そう。
『だ、大丈夫...？』
「今のはデモンストレーションだ」
『いや、「ヤベッ」みたいな顔してたよ？？』
キリヤン君は背中を擦りながらゆっくりと降りてくる。それにしても、一年生でまだ半年も経ってないのに
「まぁ、本番は収穫祭の会場にある物で作らないといけないから。どの道まだまだ未完成なんだけどね...」
『へぇ』
「でも、作戦に必要だし。絶対完成させてやるんだ。ナカム達の為にも、無論私自身の為にもね」
キリヤン君はそう言うと拳を握る。
その姿は、打ち込む物が無い私にとって、眩しい程に輝いていた。
…凄い、良い野望だなぁ...。
そうぼんやり思っていると、ふと彼が此方を向く。
「そうだ。良かったらAさん、協力して貰えないかな？」
『え、私？』
「うん。丁度同じクラスだしさ、ナカム達以外の意見あるの助かるし...どう？」
彼は私の瞳をじっと覗き込んだ。
彼の金色の瞳はとても綺麗で、吸い込まれてしまいそうになる。そんな綺麗な瞳でじっと見られてしまえば、断る事なんて出来ず、私は首を縦に振っていた。
「よっしゃ！じゃあ、明日から宜しくね。Aさん」
『え、明日から？早いね...』
「収穫祭近いもん。じゃ、約束ね！」
彼は私の手を取って握手をすると、すぐさま飛んでいってしまう。
そんな背中を見つめ、そして視線を繋いでいた手へと移した。
『...なんだろ、胸がきゅーってなる...？』
熱くなっていく頬に困惑しながらも、私は意味のある明日が楽しみになっていた。
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作者名：!! | 作成日時：2023年5月28日 12時
