【魔！企画】悪魔は今日も尻尾を揺らす【前編】 (ページ19)

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同気相求む/pkt ページ19

『あ!ピクトくん!』
「!!」

こっそりと教室に入ったにも関わらず背後から掛けられた声に思わず肩が跳ねあがる
恐る恐る振り向いて見ればその顔に笑みを湛え、先ほどまでいた友人たちを置いて俺に駆け寄るように近づいてくる
周囲の視線が刺さる
そりゃそうだ、だって俺と彼女じゃ住む世界が違うのだから

Aさん

陽キャというのは彼女のような人の事を言うのだろう

思わずそう思ってしまうような存在
俺みたいな奴がどんなに背伸びをしても届かないような存在
同じ空間に存在していたとしても、これまでも、もちろんこれからも、関わりなんか持てない存在

『放課後、ちょっと時間もらえる?』

…そんな存在

「あ…えっと…」

な、はずだった

『昨日の事で、話があるから』
「っ!」

最後に周囲には聞こえないような小さな声そう呟いて、彼女は離れていった
有無を言わせぬその様に、俺は小さく頷く事しかできない
離れて聞く彼女の様子を見送りながら、昨日の出来事がやはり現実で、夢ではなかったのだ…と改めて実感していた

――…昨日の事

その日も俺は新我々師団として宣伝活動に勤しんでいた
宣伝を終えて誰もいない事を確認して、顔に貼り付けてた外面を剥がす

「はあぁぁ…し、しんど～～;;」

正直しんどい
ホントはウツくん煽るための最初の一回だけのつもりだったのに、またやるって期待されてやらざるを得ない状況になるなんて思わなかった

愚痴を零しながら様々な事に諦めをつけ、朝から仕込んであったものを片付け始める
部屋の隅に置かれていた段ボールを取りに行って持ち上げて

「…え」
『…あ、えっと…』

何故かそこにいた“彼女”と目があったのだ

俺は慌てた
陽キャ気取りの奴が実は陰キャだったという場面を見られてしまったのだ、慌てもするだろう
冷汗が背中を伝う
脂汗が額に浮かぶ
言葉が出てこない
何とかごまかそうとして手がウロウロとする
どう取っても陰キャ感半端ない行動に嫌気がさす
それなら相手に土下座でも何でもして黙っていてもうらうしかない
そう思って手を床に着こうとした、次の瞬間

『み、見なかった事にしてください!!』
「!?」

何故か先に彼女が床に手を着いて土下座をしたのだ
その肩は震え、まるで俺みたいだ、と思ってしまった

彼女は俺と違って、スクールカースト上位の人気者なはずなのに…

「え、え?…はい」

訳もわからず頷けば、その後彼女はこちらを振り返る事なく走り去ったのだった
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