【続】あいしてください【zm】 (ページ6)

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伍拾伍(ごじゅうご) ページ6

彼女の寝顔を覗き込んで、俺は思わずクスリと笑みが零れた。

前よりは打ち解けたとはいえ、未だどこか遠慮をしている節のある彼女は、多分俺らより年下だろうのに礼儀正しくてとても大人っぽい。

でも目の前の熟睡している彼女の寝顔はとてもあどけなくて、普段とのギャップに愛らしさを感じた。

「…ここ来てからずっと頑張ってるやろ、今日くらいゆっくり休んでな。」

独り言のようにそう言いながら、彼女の目にかかった髪の毛を優しく流した。

と、ふと、彼女の艶やかな唇に、目を奪われた。
体が彼女に、近づく。

あ、やばい、

気づいた時には唇にふに、という思ったよりも何倍も柔らかい感触。

真っ白になっている頭を落ち着けるようにゆっくりと顔を上げる。

おれ、いま、なにして

自分の唇を抑える。

思考停止していた脳は先程確かに、ここに柔らかい感触があったことを記憶していた。

おれ、いま、Aに

キス、した。

脳がやっとその事を把握した途端、恥ずかしさと罪悪感で顔が真っ赤になるのを感じる。

でもそのどこかで、満たされたような心地がしているのも確かで。

彼女が起きていないのをその寝顔と寝息で確認すると、足をもたれそうになりながら静かに部屋を出た。

バタン、とドアが閉まるのと同時に、背中をドアに凭れかけて、ズルズルとそのまま座り込んだ。

赤い顔を両手で隠すように覆う。

ドキドキと心臓がうるさい。
こんなこと今まであっただろうか？

いや、ない。そういう事の経験はあれど、実はちゃんとした恋愛などした事がなかった。

そこまで考えて、ん？と思考をめぐらせる。

れんあい、とその言葉をじっくり口の中で転がして、あ、とやっと合点がいった。

「……好きなんか、俺。アイツのこと。」

ボソリと呟いた言葉は、誰にも聞かれていなかっただろうか。
それを確認するのも億劫で、膝に顔をグリグリと埋めた。