【続】あいしてください【zm】 (ページ46)

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玖拾肆(くじゅうし) ページ46

『ゾム、あのね。』

私は彼の固く握られた拳を、両手で包んだ。

『私は全然、綺麗な人間じゃないよ。』

ゾムは少し驚いた顔をすると、直ぐに首を横に振った。

「そんなことあらへん。」

今度は私が首を振る番だった。

『あるよ。

確かに私は王家の人間。でもね、
男尊女卑の社会では、王家に生まれた女児は虐げられるものなの。

それでも、私はお母様のおかげで城の中で、そして男として暮らすことができた。
勿論、事情を知っている人からは虐められてたけどね。
でも城にいるなら、って無理やり軍人の訓練を受けさせられた。

最初は躊躇したよ。人を殺す訓練をさせられるなんて。
でも躊躇って、教官に殴られて、気づいた。

私は生きていくには、人を殺すしかないんだ、って。

だからいっぱい人を殺して、良い地位も手に入れた。

私は人殺しを、昇進の手段に利用したの。』

すると、ゾムに手を引かれて彼の方に近づくと、そのまま抱きしめられた。
頭を撫でられる感覚に、気持ちよくて思わず頬が緩んだ。

「……ごめん。
辛いこと、話させた。」
『ううん。私も、ちゃんと話しておきたかったから。』

抱きしめ返すように彼の背に手を回すと、私は弱々しく聞いた。

『ゾムは、こんな私は嫌い？』

「嫌いなわけ、ないやろ。
俺は、"A"が、好きやねん。」

A、その言葉には私の人生が、私の全てが、詰まっているような感覚がする。
そしてそれを、彼が口にするだけで、私はどうしようもなく心が踊るのだ。

『私も、同じだよ。

ゾムが、好き。』

ふは、と耳元で笑う声が聞こえる。
体を少しだけ話して顔を見つめ合う。

「じゃあ、俺の恋人になってくれますか？」

『勿論。』

そしてお互いにくすくすと笑うと、どこかで、カシャッと音が聞こえた。

『え』

するとカーテンが突然開かれる。

｢｢｢おめでとう～～！！｣｣｣

突然入ってきた幹部達に思考回路がショートする。

『は！？』
「いや～やっと付き合ったか！」
「もどかしかったもんな……キレるレベルで。」
「おい今いい所やったやろが……なんで入ってくんねん帰れや。」
『待ってゾム気づいてたの？？！』
「おん。」
『言ってよ！！！』
「なんでや、いい雰囲気なのに言うわけないやろ。」
「あっはっはっはっはっ！！！」

一気に賑やかになった場に顔を赤くしながら唖然としていると、グルッペンさんにいい笑顔で肩を叩かれたので、思わず腹を殴った。