漆拾弐(しちじゅうに) ページ23
「ディオス国の前線部隊はシノア国に突入、現在交戦中だが……まぁシノアが劣勢と見える。」
地図の上を指が滑っていく。
唸るような声を出すと腕を組んだ彼に、オスマンがいつもより落ち着いた声で同意する。
「せやろな。シノアもそれなりに強いとはいえ、領土も師団数も規模が違う。」
「シノアはどこに応援出しとんの？」
「ルー大陸の奴らにけしかけてるそうだ。」
「海から応援を図ってんのか。ま、妥当なとこやな。」
「それも、上陸作戦が成功すればの話ですが…」
遠い目をしたエーミールに、グルッペンは眉のシワを深めて口を開いた。
「どうする、エーミール。」
「…まぁこれで同盟を切って関係ないふりをしても、シノアを飲み込んだディオスが攻めてくるでしょうねぇ。」
「シノア飲み込んだディオスとかまじパワーワード、俺やだわそんなんと戦うの。」
エーミールの言葉に軽く乗っかかったシャオロンだったが、その顔にいつものようなおちゃらけた様子は一切感じられなかった。
するとグルッペンは私の方を見たので、『右に同じく』と呟くと、グルッペンは頭をかいた。
唇は震えていた。
「……おそらく、俺達がレティに攻め込むのを見て、好機だと思ってシノアに宣戦布告したのだろう。
そっちに集中してしまえば、俺達がそちらの戦争に介入することはほぼ無い。
＿しかし、彼らの最大のミスは、俺達が電撃戦で突撃し、この短期間で戦争が終了すると予想していなかったことだ。」
勢いよく視線が私に集まる。
私は委ねるように、ただグルッペンを強い目で見つめていた。
彼はふ、と笑ったかと思うと、次の瞬間バン！！と机を勢いよく叩いた。
「＿＿＿やってやろうじゃないか。」
思わず口角が上がる。
あぁ、私ももう、戦争屋だ。
「＿＿＿＿＿＿さぁ諸君、戦争をしよう。」
《《ハイル･グルッペン！！！》》
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