きっと未来を紡ぐ1 ページ42
「そう、なの」
宮野志保がテーブルに水を飲み干したグラスを置いた。こつ、と音がして頭が痛んだ。
あの後、話をしようと言った少年に、とりあえず今は休めと言われ言葉のままに眠りについた。
ひどく熱かった体と頭痛に、気を失ってしまったと言い換えてもいいほどに、泥のように眠りについた。
目を覚ますと陽が登っていて時計を見ると昼の13時を少し過ぎた頃だった。
随分寝過ぎてしまったと辺りを見回すと、少し離れた窓際の近くに置かれた椅子に腰を掛け、何やら本を読んでいるらしいアンナと名乗った少女の姿あった。
声をかけるか迷っていると、志保の視線に気付いたのか、アンナがこちらに視線を向けた。
「あ、おはようございます。体調どうですか？」
お水入れますねと立ち上がったアンナに、そういえば体調は気だるさは残るものの、だいぶ良くなっていた。そのままにアンナに伝えると「よかった」と笑う。
「コナンは今自分の家にいて。あ、家はね、隣なんですけど」
そう言ってついと視線をどこかに向けた。その先が彼女たちの家なのだろう。そうだとすれば、ここは？
「ここはね、阿笠博士さんっていう、私たちがよくお世話になってるのお家なんです」
発明家さんなの、と彼女が付け加えたその時、扉が開いてふくよかな体つきの男が姿を見せた。
「博士」アンナがそう呼ぶのでこの人がこの家の主人なのだと合点がいく。
「おお、目を覚ましたか。よかったのう」
ふくふくと朗らかに笑う男は志保に改めて自己紹介をするとアンナにコナンを呼ぶように言った。
「ん、でもそろそろくると思う」
その言葉の通り、直後にインターホンの音が響いた。阿笠が対応をしにいくのを目で追うと、アンナがベッド横のテーブルに水の入ったグラスを置いた。
「コナンは、きっと宮野さんの力になってくれますよ」
ふわりと笑う少女に、どうしてと言葉が出た。
「どうして、何も言わないの。何も訊かないの？」
「……私は、たぶん宮野さんたちほどには命が重くないから」
「え？」
どういうこと、と聞こうとする前にノックの音が鳴り扉が開いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：コトハ | 作者ホームページ：
作成日時：2016年10月26日 22時
