年の近い同居人1 ページ5
工藤新一には年の近い、二人の同居人がいる。
「おはよう、新一。また夜更かしか?」
「おはよ、新一にぃ。朝ご飯できてるよ」
「……ん、はよ。あー、昨日買った小説面白くってさ。いただきます」
そっか、読み終わったら俺にも読ませてくれ。
もちろん、読み終わったら感想聞かせてくれよ。
分かったよ。
短くて他愛ない会話をしながら、テーブルに並べられた朝食――今日のメニューは薄く焦げ目のついた焼きたてのトーストに、半熟のベーコンエッグ、食べやすい大きさに切られたフレッシュサラダ。それとカップの7分目くらいまでに注がれたブラックコーヒーだ――に舌鼓を打つ。
新一は自他共に認めるほど料理が苦手だ。
両親が海外へ発つ前に一通り教えてもらったものの、やはり苦手意識があるせいか、なかなかキッチンに立つことができない。
同居人の青年の方は自分とさほど変わらない腕前だが、少女の方はなかなかどうして料理が上手い。といっても食べたことがあるのは和食とロシア料理だが。
なぜ中華でもイタリアンでもなくロシア料理なのかと問えば、どこか寂しそうな顔で祖母がロシア人だからと答えた。それに微妙な顔をする青年は、そんな少女の頭を撫でていた。
禁句だっただろうかと様子を伺えば苦笑いを返す。それに察するようにそれ以上の会話は避けた。
トーストの横に置かれた瓶詰めのイチゴジャム(もちろんお手製である)をトーストに塗りながら、向かいの席に座る青年を盗み見る。
新聞を読み終わったところらしく、読み終えたそれを、まるでポストから取り出したばかりのようにぴしりと綺麗に折りたたみ、新一のとりやすい位置に置こうとしていた。
目が合う。
「何かあったか?」
「……べつに」
トーストにかぶりついた。
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作者名:コトハ | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月26日 22時