その炎の熱さを知らない 1 ページ32
「どう? あの子たちと上手くやれてる?」
「まあ、それなりには」
「大丈夫さ、有希子。上手くやれないようなら新一をこっちによこすように仕向けてくれとコナンに言ってあるからね」
「はあ!? なんで!」
ぜってぇ嫌だ! と電話口で息子が怒鳴る。それに笑い冗談だと告げた。
数ヶ月前にここにきた彼らの姿を思い浮かべながら優作は目の前の紅茶を一口飲んだ。
20歳になったと言う新一は今までの自分の体験を淡々と説明した。あまりにも淡々としているから本当のことなのか疑わしいと思わなくもないが、息子は自分達に隠し事はすれど嘘をつくことはほとんどない。それも、こんな現実離れしたような内容なら殊更。
そして少女の方に目を向けて小さな頭を撫でた。次はお前の番だ、ということだろう。それを受け取って少女も自分のことと置かれた状況のことを、申し訳なさそうに肩を狭めながらどもりつつも話してくれた。
二人の話になるほど、と口にしつつもどうしたものかと思考を巡らせる。
彼らのことを信じたい気持ちはあるが、それでもやはり警戒してしまう。そうして出た答えを、彼らの瞳を見ながら口にする。
「3ヶ月だ。3ヶ月、ここで暮らしなさい」
「……理由は?」
「正直な話だが、私はまだ君たちを信用しきっているわけではない。もちろん君たちのことを疑いたいわけではないんだ。だが、息子――この世界の新一に、何かあったらと思うとね。すまない」
それを言っちまうのが親父だよなあ。と嬉しそうな苦笑いで彼は頭をかいた。
「ああ、分かった。俺としてもそっちの方が助かるし」
「なぜ?」
「……こいつにいろいろと覚えて欲しくてな」
隣に座る少女に顔を向けて頭を撫でる。
その発言に驚いたように彼女は目を丸くした。
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作者名:コトハ | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月26日 22時