この愛は宿命〜Claret Side〜 ページ13
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[春香、悪いことは言わないわ。戻ってきなさい。]
電波の入りにくい中で辛うじてジョディの声が聞こえる。
戻る?
それは即ち潜入を諦めるという事だ。
潜入の際、赤井さんは私に言ってくれた。
― 例え潜入が失敗したとしても、何が何でも生きて帰ってこい ― と
でも、それは出来ない。
赤井さんから潜入捜査を引き継いで、組織で得た私の地位が水の泡になることもあるけれど、
ラムへの報告を阻止しなければ、彼が多くの犠牲を払い、組織で築き上げた地位も失われる。
私が此処で片を付ければ、彼は潜入を引き続き行える。
公安に恩を売れる機会にもなり、対立も少しは和らぐだろう。
[それは出来ないわ。]
数秒の沈黙の後でジョディが尋ねた。
[彼の為ね?]
[ええ、ごめんなさいジョディ。例えこの身が地獄の淵に投げ入れられようと、裏切り者と罵られようと、彼を愛さずにはいられなかったの。私が戻ってきたら、思いっきり張り倒してくれて良いわ。]
彼は貴女の心を踏みにじった相手ですものね。
その相手を愛してしまった私も同罪。
[・・・・・・]
[赤井さんは許してくれたけど、わかっているわ。これ以上迷惑はかけられない。それに、最大の理由はあの二人にこれ以上争って欲しくなんかないのよ!!]
[春香、]
彼があの人を攻撃する姿は勿論だけど、貴方もどれほど傷ついているのかを知ってしまったから。
もう二人が傷付け合う姿を見たくはないの。
私の最期の我が儘よ。
[わかったわ。何を言っても無駄のようね。]
そうね。この愛は私の宿命。
私はあの人に巡り逢う為に生まれてきたのだ。
どうしてそれに抗うことができるだろうか。
きっと地獄に堕ちるでしょうね。
使命に背き、上司と同僚達を裏切る事と知りながら、
でも、後悔なんてしていない。
あの人が地獄に堕ちなければいい。
地獄に堕ちるのは私一人で充分よ。
[後、ジョディ。ひとつ頼みたいのだけど、]
[何? 遠慮なく言って]
援護射撃はお願いした方が良いでしょう。
さてと、
準備を始めましょうか。
その時、
バン
と扉が強く開く音がした。
「誰っ!」
思わず銃を向けると、
そこにいたのは、
Femme fatale (ファム・ファタール)→←真の恋は蕀の道 ~Bourbon Side~
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作者名:Detective A | 作成日時:2018年5月1日 0時