episode18 ページ18
「待って天草くん！」
Aの声に、流は立ち止まった。
「ね、ほんとに冥王星との戦いが終わるまでは戻ってこないつもりなの？」
流は振り向かず、じっと黙っている。
Aは流に近づき、そっと背中に寄り掛かった。
さっきまであんなに晴れていたのに、灰色の分厚い雲が、空の向こうから一面覆いつくそうと大きくなり始めていた。
「自分だけの問題だから、って気持ちもすごくよく分かるんだ、私」
流はじっと聞いている。
「だって言ったでしょ。私も同じだって。…でもさ、周りの人間は、私達は、私は、天草くんのその鎖を一緒に解きたいの」
Aはぎゅっと流のシャツを握った。
「もがけばもがくほど、痛いところに巻き付いて離れてくれないその鎖を、断ち切るお手伝いをしたいだけなんだよ。だってこんなに苦しそうな天草くん、見てられないよ………」
ぽつぽつと雨が降り始めた。
それは瞬く間に豪雨となり、2人を打ち付ける。
「お願い。だから…」
「何も知らないからそんな事が言えるんだよ！！」
流はAを振り払い、そう叫んだ。
「何も…何も知らないから…」
思いつめた様子の流。
苦悶に歪んだその顔は、泣きそうにも見えた。
「………知ってるよ」
Aは冷静に、流の目を真っ直ぐ見据えてそう言った。
「知ってるよ、ちゃんと。それでも、私は天草くんといたい。天草くんの支えになりたい」
大丈夫、傍にいるよとAは流を抱きしめる。
子供をあやすように頭を撫ぜ、優しく声をかけるA。
流はそっとその小さな背中に腕を回した。
Aもそれに応え、雨に打たれながら、2人は強く抱きしめ合っていた。
しばらくして、流はAの腕を振りほどいた。
｢ごめん……。………風邪、引くなよ｣
流はそう言って去って行った。
｢…さて、事件解決に向かわなくちゃね｣
流に背中を向けて、Aも歩き出す。
激しい雨音が、打ち付ける雨が、思考をクリアにする。
決着の時は、もうそこまで来てる。
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ツキツキ - 癒璃華さん» 18読み返しました！夢主ちゃんとリュウが超接近で印象的な天候のシーンでしたね(ネタバレ防止迂遠記述)。皆の素が見られるSide Stotyも楽しみなのでまた拝読できましたらうれしいです。完結まで駆け抜けていただけますよう、引き続きエールを送らせてください。 (2021年1月23日 23時) (
レス) id: 3bed7d42bc (このIDを非表示/違反報告)
みゅーちゃん(プロフ) - 癒璃華さん» はい！楽しみにしてます！ (2021年1月23日 14時) (レス) id: e114505ee6 (このIDを非表示/違反報告)
癒璃華(プロフ) - みゅーちゃんさん» ありがとうございます。このペースでいけば、たぶん2月中には完結まで行けると思うので、お楽しみに〜！ (2021年1月23日 14時) (レス) id: c85d21b8f5 (このIDを非表示/違反報告)
癒璃華(プロフ) - ツキツキさん» 自分でもそんなこと言ってたの完全に忘れてて、見直してきました、笑 覚えていただいて光栄です。実は18？かな、主人公が流に知ってるよ、と言うシーンが書き始めた当初から構想していたお話でした。もう二度と更新停止することなく完結まで駆け抜けます！ (2021年1月23日 14時) (レス) id: c85d21b8f5 (このIDを非表示/違反報告)
みゅーちゃん(プロフ) - 癒璃華さん» わぁ！凄く楽しみです。冥王星との戦いがどのように描かれるのか楽しみにしてます。ずっと応援します！ (2021年1月21日 23時) (レス) id: e114505ee6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：癒璃華 | 作成日時：2021年1月18日 22時
