1:探偵の助手 ページ1
「ただいま戻りました」
入り口の扉を開けて、中に居る人物に声をかければ「おー」となんともまあ気の抜けた返事が返ってきた。クソ、サボりやがって。腕の中でモゾモゾと動くそれを目の前の人物に見せ付けながら、ハッキリと声を出す。
「依頼!終わったんですけど!?依頼主に電話してもらえますか!?暇ですよねえ!!」
「ああ?俺はそんなに暇じゃないんだよ。助手風情が意気がるなよ。大体なあ、お前俺にいくら借金あると思ってんだ?早く残り返せよ」
「わかってますよ!じゃあ早くお給料寄越しやがれ!・・・マメオヤジも何とか言ってよ!!」
「に″ゃお」とマメオヤジが鳴いた。さっきまでの依頼、猫探し。身分の高い家で飼われている猫の捜索だった。にしてもマメオヤジって名前は可哀想だと思う。現に目の前の男のツボにハマったようだ。さっきから「マメオヤジっ・・・ふはっ!」と吹き出し続けている。
「仕事してくださいよ!!探偵でしょう!?」
「うるせえな助手。ほらよ」
封筒に入ったお金を渡された。中身を見て絶句した。おかしい、明らかに少ない。
「・・・何だその顔。文句あんのか?嫌ならいいんだぞ、うちを辞めても。まあその場合俺が貸した金、550万。即日払いだからな」
「・・・クソったれー!!!!」
バカデカイ私の声が響き渡る。
時代は大正。その大正の時代を象徴するこの東京の少し外れにあるここで私は宇髄さんの助手として働いている。給料はちょっと少ない。だけど文句は言えない。
「おいA、準備しろ」
「?、どこいくんです?」
「決まってんだろ?依頼だよ」
だってここは『宇髄探偵事務所』
私が彼に雇ってもらっている身だからだ。