第十六話 ページ16
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捨てたられたΩの末路は、ろくな結末で終わる。だからこそ、彼らは相手に対して精一杯の愛を伝える。捨てられない様にする為に。
首輪は所詮、誰かの物である事を相手に示しているだけだ。牽制にはなるが、それだけだ。彼の首から手を離す。瞼を伏せ、顔を下へ向ける。
「…私は、使えないαです。貴方が例え、ヒートを起こしても、ああいう形でしか貴方を助ける事が出来ません」
首を噛む勇気なんて、ある訳が無い。ましてや、ずっと隣に居て上げられることを自分は誓ってあげられない。
「俺の隣に居るのは不安か？」
「当たり前じゃないですか…」
呟く彼女の言葉は震えていた。彼は床に両膝を跪いて。拳を握る彼女の手に自分の手を乗せる。
「俺は自分の゛運命゛が貴方で良かったと、心から思っている」
あの桜の下で、自分は唯一無二の運命の番に出会うことが出来た。俯く顔を上げれば、彼は笑みを浮かべながら告白する。
「好きだ、A嬢。心から貴女を愛している」
手を取って彼女を椅子から立ち上がらせる。そのまま腕の中へ彼女をしまい込む。
「A嬢はとても感性豊かだな。それは、良い事だぞ」
自分の胸に顔を隠す、彼女の頭を撫でながら窓に映る青空を眺めていた。
赤と青が交わって、空の色は紫色に変わっていた。そんな空の元、彼は彼女の手を引いてゆっくりと歩いて行く。
「返事はしなくて良いゾ。俺が自分の思いを言いたかっただけだからな。A嬢はそのままで構わない」
想いを受け入れて欲しい訳では無い。ただ知って欲しいだけだ。繋ぐ手が後ろへと引っ張られる。振り返ると、彼女の足が止まっていた。繋ぐ手を一旦、離して側へ寄る。
「…ちゃんと、考えますので、もうちょっと待ってて下さい。すみません…」
答えられないのが悔しいのか、はたまた不安なのか。泣きそうな顔をしていた。何処かほっとした気分になった。自分の事を考えてくれる、それだけで我々は嬉しくて堪らないのだ。
「…待つさ、いつまでも」
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作者名：無地 | 作成日時：2023年10月31日 10時
