【d!】仮契約 (ページ14)

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第十四話ページ14

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辿り着いた建物の看板を、彼女は呆然と口を開けて見上げていた。隣を向けば、彼は自信満々な笑みを浮かべていた。

「えっと、此処は…」

「勿論！スイーツブイッフェ店だッ！」

目の前に二枚の紙を見せる。チケットにはスイーツ食べ放題券と書いてあった。店内へ入り、カウンターに居る店員にチケットを渡すと席へと案内される。

「ちなみに、此処はカップル専門店だゾ」

「はい…!?」

驚く彼女に、彼はニヤニヤと口元を歪ませていた。店員が皿いっぱいに盛られた、スイーツを二人の元へ持ってきた。

「おぉ…。これは素晴らしいなッ！」

ケーキ、マカロン、ドーナツ、トリュフ、ブラウニー、ショコラ。名前を上げれば、キリが無いほどに皿の上には種類豊富なスイーツが乗っていた。目の前に座る、彼女はゆっくりと食事を進めていた。その手が少し、甘い物を避けている感じがした。

「苦手か？」

「え、いや、そういう訳では無く…」

愛想笑いで逃げる彼女の、目の前に置いてある皿を取って自分の方へと寄せた。

「すまない。俺の好みをA嬢に押し付けていたようだ」

「いえいえ、大丈夫ですよ！お気になさらずに…」

慌てて、手を振って気にしていない事を告ればフォークとナイフで素早く空いている空の皿にスイーツを載せていく。

「コレならば、A嬢も食べられるだろう。甘いのが苦手な人でも食べられるヤツだからな」

そう言って彼は、スイーツを乗せた皿を彼女の目の前へと置いた。

「……あ、ありがとうございます…」

甘い物が苦手な事を悟られないようにしようとしたが、看破されてしまった。渡された皿の上には、クッキー、マカロンドーナツ、そしてケーキが置かれていた。フォークを握り、チョコケーキを一切れ、口に入れる。彼的には甘くないのかもしれないが、彼女にはとても、甘く感じてしまった。

店の扉を開けると、変わらず空は快晴。雲ひとつ無い青空が見えていた。眩しく思い、目元を手で光を遮る。ぐいっと軽く身体が横に引かれる。

「あ、あの？」

「デートだゾ。A嬢」

怪しい笑みを浮かべながら、自分の手を彼女の手に重ねる。指を絡ませ、離さぬ様に握り締めた。

「…次は二人っきりで落ち着ける場所へ行こう」

そう言って、また、彼は彼女の手を引いていく。