49回戦 ページ9
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「臼と杵なんて良く見つかったね」
文化祭当日の朝。
ユキに連れられて男子寮を訪れた。ユキと同じ部の人がまさかの臼と杵を実家から持ってきてたとかで。既にユキの部屋へ運んであるそれを教室へ持っていくとかなんとか。
「うちの部の天然が持ってたから。助かったわ。A、杵持てよ」
イメージしてたのは石臼だったけど、ユキが持ち上げたようとしたのは木臼だった。
「……重っ!」
「当たり前じゃん。なんで1人で運ぼうと無茶したのか謎すぎるんだけど?!」
「昨日、拓斗の部屋から塔一郎が1人で持ってきたからイケると思ったんだけどな……」
拓斗とは? と思ったけど、きっとさっきユキが話したこの臼と杵の持ち主の天然だ。
「アブの力にユキが敵うはずないじゃん」
「……んや、元々ポテンシャルは高いっ……方なんっ……だっ!」
意地になったのか、1人で持ち上げようと試みるユキの眉間のしわが深くなる。その表情に心臓が浮く感じがしたけど――
どうしてだろう。ユキがお説教中に浮かべる表情にゾクリとする、あの瞬間の方が心地よく気持ちが良い。
「私、杵持って先に教室戻るね」
「は?!これは?!」
「ポテンシャルは高い方なんでしょ?頑張れー」
「ちょっ!おいおい!どう見ても無理してんの分かんだろ?」
もぉ。ユキは昔から素直じゃないな。手伝ってほしいなら、手伝ってほしいって言えば良いのに。とは言っても、私の力が加わったところで臼が持ち上がるのか謎だけど。
「じゃあ、杵は後でユキが1人で持って行ってね」
「しゃぁねーな。ホラ、そっち持って。せーので持ち上げんだぞ」
「なんでそんな偉そうなの?なんか納得出来ない!」
「元はと言えば、お前のせいで餅つき大会になったんだからな?!」
それを言われちゃ、さすがにささやかな罪悪感で渋々ユキの向かい側にしゃがみ、臼に手を伸ばすしかないじゃないか。
「んじゃ……せーのっ!」
ここ1週間アブに借りたダンベルを荒北先輩を思い浮かべながら持ち上げたせいだろうか。思った以上に勢い良く臼を持ち上げることが出来てしまったせいで――浴衣の袖を踏んだまま立ち上がってしまった。
身体のバランスが傾くと、同じように臼のバランスも傾いた。
「あぶねっ!」
スポーツエリートは反射神経も抜群で。
「大丈夫かよ?!」
「うん……ユキは?」
「ん。平気……」
大きな物音の後に瞼を開くと、ベッドに倒れ込んだ私の上にユキが覆い被さっていた。
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eye(プロフ) - 色々色の助さん» 最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!!勿体ないお言葉ありがとうございます。慣れない書き方に苦戦しましたが、そう受け取って頂けて嬉しいです(^^)これからも色んなお話に挑戦していきたいと思ってます!応援よろしくお願い致します! (2016年2月11日 0時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - ミリアさん» 最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!!中途半端な三つ巴になってしまいましたが、お楽しみ頂けましたか?こちらこそ、いつも応援ありがとうございます(^^)今後もゆっくりですが、色んなお話に挑戦しようと思いますので応援よろしくお願い致します! (2016年2月11日 0時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます。攻められる荒北さん、お楽しみ頂けたようで嬉しいです。他作品のご愛読感謝致します!これからも応援よろしくお願い致します(^^)最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!! (2016年2月11日 0時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
色々色の助(プロフ) - 完結お疲れ様でした。ここでは字下げや文を意識したような作品はなかなか見受けられませんがこれは物語としての表現などとても纏まり良く大好きでした!!受け身の荒北も楽しかったです。eyeさんの物語の着眼点にはいつも驚かされますwこれからも応援してます(*^^)v (2016年2月10日 22時) (レス) id: 505784ee23 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア(プロフ) - 完結お疲れさまでした(*^^*)攻める夢主vs攻められたくない荒北に攻める黒田が加わって面白かったですwwいつも楽しいお話をありがとうございます!これからもeyeさんの作品楽しみにしてます。 (2016年2月10日 22時) (レス) id: 152cfe1d9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:eye | 作成日時:2016年1月26日 21時